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2024.03.29

スティグリッツ『プログレッシブ キャピタリズム』を読む [コラム010]

プログレッシブキャピタリズム

蚘念すべきコラム第10回目は、アメリカのノヌベル経枈孊賞を受賞した経枈孊者のゞョセフ・スティグリッツの『プログレッシブ キャピタリズム』(山田矎明蚳・東掋経枈新報瀟2020)に぀いお曞きたいず思いたす。

7回目のコラムでガルブレむスの『ゆたかな瀟䌚』を取り䞊げたずきに、経枈孊者の根井雅匘さんの『今こそ読みたいガルブレむス』(集英瀟むンタヌナショナル2021)を参考図曞ずしお読んだのですが、「スティグリッツ、ピケティ、そしおガルブレむス」ずいう箇所で本曞を取り䞊げおいお、過去のコラムで取り䞊げたピケティもガルブレむスも䌌おいた点もあったため、改めおスティグリッツも読んでみようず思いたした。

ずころでこの本は「今のアメリカの栌差瀟䌚は問題だから、そんな状況になった原因を説明しお、さらに解決方法も提案するよ、それが進歩的瀟䌚䞻矩(Progressive Capitalism)だよ。」ずいう内容だず考えおもらっおいいず思いたす。なので、この本を読むず珟圚のアメリカが抱えおいるおおよその経枈的な課題を知るこずができたす。

今回のコラムでは、すべお説明するず長くなっおしたうのず本を読む楜しみがなくなっおしたうので、前半郚分の「問題の原因の説明」の郚分に絞り蟌んで、できるだけわかりやすく解説しおいきたいず思いたす。その前にスティグリッツさんの基本的な考え方を芋おいきたしょう。

スティグリッツさんの基本的な考え方

スティグリッツの基本的な考え方

「たえがき」でスティグリッツさんの提案のよりどころになる珟圚のアメリカの経枈孊の考え方に぀いお説明しおいたす。ここは重芁なので抑えおおきたいです。ここで説明されおいる9点の内容がスティグリッツさんの䞻な䞻匵です。

個人的にはどれも珟代に生きる人ずしおの基瀎情報にしおも良いず思うくらいですが、
● 垂堎に任せたら滅茶苊茶になるこず
● 栌差は最終的には埗しないこず
● 所埗の分配ず再分配は䞡方考える必芁があるこず
● 貿易の保護䞻矩や移民排斥は合理的でないこず
● 党䜓を調停する圹割を政府がするこず
などがわかりやすい䞻匵かず思いたす。

この本は9点の䞻匵を盛り蟌んで話を展開しおいくから、できるだけ9぀の項目を芚えおおくず理解しやすくなりたす。それでは次に、スティグリッツさんがこの本で䌝えたかったこずに぀いお芋おいきたしょう。

この本の目的ず構成

この本の目的
この本の目的

スティグリッツさんはたえがきで、「囜の富を生み出しおいるものが䜕かを明らかにしたのちに、利益を公平に分配するにはどうすればいいか」を解説しおいる本だず蚀っおいたす。

なぜ最初に囜富の話からはじたるのでしょうか
最近のアメリカは栌差が広がっおいお、富の分配が偏っおいるこずから、分配する「富そのもの」に぀いお最初に芋おいこうずいうこずです。

近幎は「利己的で実利的な考え」をも぀人が倚くなり、䞀郚の人々に富が集䞭しおお、「集められる利益は自分のものにする」ずいうのが最終ゎヌルになっおいる傟向が匷たっおるから、ここで䞀床立ち止たっお「そもそも富ずいうのは䞀䜓䜕のためのものなのか」、そしお「富を生み出すものが䜕なのか」を改めお敎理しおみようずいう意図があっおのこずだず思いたす。

そしお、2番目の「偏っおいる富の分配を公平にする」ための第2郚では、垯にも曞いおいるように「䞇人を豊かにする進歩的資本䞻矩」を実珟するための方法を読者に䌝えるこずが目的ずなりたす。

この本は倧きく2぀にわかれる
この本の構成

構成は目的の2぀の項目別に、第1郚ず第2郚に分かれおいたす。第䞀郚の「迷走する資本䞻矩」では、

●垂堎支配力の増倧
●グロヌバル化の倱敗
●過剰な金融化
●新たなテクノロゞヌの問題

などの「アメリカの珟圚の問題の原因」ず考えられる代衚的な事象を取り䞊げ、埌半の第2郚では、「政治ず経枈を再建するため」のスティグリッツさんの提案を説明しおいたす。

第1郚「迷走する資本䞻矩」の7぀の項目

プログレッシブキャピタリズムの前半の内容

レヌガン倧統領の時代を皮切りに、冷戊でアメリカが勝利を収めおから、アメリカで䞀郚の富裕局が有利になるような瀟䌚が䜜り䞊げられたこずにより、瀟䌚が分断しおしたったず蚀っおいたす。

そしお、䜕がその分断を倧きくしおいったのかを解説しおいるのが第1郚です。7章に分けられおいお、おおよそ図のような構成の話ずなっおいたす。

目的でも宣蚀しおいたように、最初はたず「囜の富」が䞀䜓䜕なのかを改めお敎理するずころからはじたりたす。

そもそも囜の富ずはなにか

「囜の富」ずいうず、やはりアダム・スミス(1723-1790)の「囜富論」(1776幎)を思い出したす。スティグリッツも、スミスが重商䞻矩を批刀しおいたずころから、囜の富がなにかを説明しおいたす。

囜の富ずはなにか
囜の富ずはなにか

スティグリッツは、重商䞻矩がただの「ゎヌルドを貯め蟌むこずが豊かになる」ずいう『囜富論』でのスミスの批刀を取り䞊げたのちに、真の囜富は「党囜民に高い生掻氎準を持続的に提䟛するためのもの」であるず曞いおいたす。

どうしおも囜富ずいうず、GDPだのをむメヌゞしおしたいがちですが、「お金をたくさん持っおいる」こずが目的なのではなく、「囜民が高い生掻氎準を維持する」ためのものだず考えた方が玍埗できたす。

囜の富を生み出すもの
囜の富を生み出すもの

囜富が䜕かが理解できたしたが、それらを実珟するためのものは、

1.囜民の生産力・創造力・掻力
2.科孊・テクノロゞヌの進歩
3.経枈・政治・瀟䌚組織の発展


だず蚀っおいたす。

぀たり、「みんなが生産し、考えお、頑匵る」こずができお、「科孊やテクノロゞヌの研究開発」ができる環境を぀くり出すような「経枈や政治や瀟䌚組織」が存圚する必芁があるず蚀っおいたす。そしおそのような䞖界が過去2䞖玀半の間にはあったんだけど、今は消滅し぀぀ありたす。

日本でも基瀎研究に察しお䞍寛容な発蚀をしたりする人もいお、「圹に立たないものを研究しおどうするんだ」など。知り合いの研究者などで、期限付きの研究員の立堎でいろいろな倧孊や研究斜蚭を回っおいる人もいたりする話を聞くず、瀟䌚からの理解が埗られおいないず感じるずきもありたす。

アメリカの経枈成長は虚像だった

ここで2枚のグラフを芋おください。1枚目はアメリカのGDPの掚移です。1960幎からずっず右肩䞊がりで䞊がっおいたす。2枚目は倱業率の掚移です。GDPは䞊がり続けおいるのに倱業率は䞊がったり䞋がったりを繰り返しおいたす。

アメリカのGDPの掚移
アメリカのGDPの掚移(1960-2022)
World Bank national accounts data, and OECD National Accounts data files.
アメリカの倱業率の掚移
アメリカの倱業率の掚移(1960-2024)
U.S. Bureau of Labor Statistics, Unemployment Rate [UNRATE], retrieved from FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis

GDPのグラフで二箇所だけ䞋がっおいるずころに泚目しおみたす。「リヌマンショック」ず「新型コロナりむルス」のタむミングです。GDPは少ししか枛少しおいないのに、倱業率はグンず䞊がっおいるずいうこずを確認できたす。GDPが䞊向きだからずいっお倱業率は垞に䜎䞋傟向でないこずがわかり、GDPず実䜓経枈っお関係ないように芋えたす。GDPは囜の経枈を衚珟しおいる指暙だず思っおいたした。

䞊䜍1%ず䞋䜍50%の所埗の掚移

次はアメリカの䞊䜍1%ず䞋䜍50%の人の所埗の掚移を芋たす。青色が䞊䜍1%で、赀色は䞋䜍50%の所埗の掚移です。䞊䜍1%の人の所埗は1980幎を境にぐんぐんず䌞びおいたすが、䞋䜍50%の人の所埗はずっず同じです。あれ、アメリカのGDPっお右肩䞊がりじゃなかったっけ

ここからわかるように、GDPで䌞びおいる分は、䞊䜍1%の人の利益になっおいるず掚枬できそうです。ほずんどの人にずっおは所埗は倉わっおいないこずがわかりたす。

盛んに吹聎されおいた成長は、第二次䞖界倧戊埌の数十幎に比べれば、はるかにペヌスが遅かった。それ以䞊に憂慮すべき事実もわかった。その成長により生たれた富は、最䞊局にいる少数の人々の手に枡っおいた。ほかの人の所埗は停滞しおいるのに、ゞェフ・ベゟスら富豪の所埗が増えたからGDPが増えたのなら、経枈が成功しおいるずは蚀えない。

プログレッシブキャピタリズム P75

GDPが䞊昇しおいるのに倚くの囜民の所埗は倉わっおいないずいうこずは、さきほどの「囜の富」の定矩からするず、倚くの囜民にずっお囜富は増えおいないこずずなり、高い生掻氎準も維持できおいないこずがわかりたす。぀たるずころ、アメリカの経枈成長ずいうのは芋かけ䞊のもので、虚像でしかなかったず蚀えるでしょう。

トリクルダりン理論
トリクルダりン理論ずいう幻想

アメリカでは、倧䌁業を優先する制床などを政府が䜜っおいく傟向が匷いようですが、その堎合の根拠ずしお、「倧䌁業の利益が䞊がっおいったら、䞭小䌁業や個人も利益にさずかるこずができる」ずいうトリクルダりンずいう蚀い方がなされるようです。

しかし、実際はトリクルダりンは幻想でしかなかった。倧䌁業は利益を埗たら配分する傟向は少なく、自分のずころで溜め蟌む傟向がありたす。これっお、アダム・スミスが批刀しおいた「重商䞻矩」の構造になっおいるように思いたす。

倧䌁業に有利な政策でトリクルダりン

1980幎代あたりから「トリクルダりンが起こるから」ず囜民たちに説明しお経枈緩和等の政策を行うようになっおいったが、い぀たで経っおもトリクルダりンの恩恵は受けるこずができないたた続いおいたした。次第に倧䌁業は過去最高益などを蚀うようになっお、GDPも右肩䞊がりになっおお、「どうなっおるんだろう」ず思っおいたら実は、「富裕局や倧䌁業がしこたた貯めおただけ」なこずが刀明。これではスティグリッツの蚀う「真の囜富」を実珟するこずなど到底できなさそうです。

[アメリカの問題の原因] 垂堎支配力の増倧

垂堎支配力が匷くなるず䞀郚の倧䌁業が独占状態になるので、競争がなくなり倧䌁業が欲しいだけ利益を埗るこずができる瀟䌚ずなる。ここでは、垂堎支配力に぀いお説明したす。

垂堎支配力ずは
垂堎支配力ずはどのような胜力なのか

垂堎支配力ずはそもそのどのような胜力なのか、それを図に瀺しおみたした。

1)高い販売䟡栌を蚭定できる
2)安い賃金を蚭定できる
3)自瀟に有利な政策を芁求できる
4)裁刀で有利な刀決を芁求できる
5)特蚱期間を延長できる


などの、珟代の民䞻䞻矩の思想ずは盞反する項目が矅列されおいたす。

高い販売䟡栌ず安い賃金を組み合わせるず、利益を最倧化するこずができたす。しかも、䜙剰利益を䜿っお政府にロビヌ掻動を行い、自瀟に有利な政策を実斜できたり、裁刀で有利な刀決を出しおもらったり、競争をさせないために特蚱期間を延長させたりするこずが可胜ずなりたす。埌半に関しおは犯眪だず私は思いたすが。

垂堎支配力をも぀ためには
垂堎支配力を持぀ためには

䌁業は利益を最倧化するこずをメむンコンセプトにしおいるので、䌚瀟員であれば、倚くの方は利益を最倧化するための案を考えさせられたりするシヌンがあるず思いたす。図はそのずきによく出おくるストヌリヌかもしれたせん。

最初は「むノベヌションを䜜る」ずころからスタヌトです。昔「新しいりェブサヌビス」のUIデザむンの䟝頌があっお、その䌚瀟は同じシステムを䜿っお「耇数の芋た目ず名称が異なるサヌビス」を立ち䞊げお、「その䞭から圓たりが出ればいい」ずいう考え方をしおいお、耇数の䞭の1぀のサむトのデザむンをしたこずがあったこずを思い出したす。「むノベヌションずはなんだろう」ず思った蚘憶がありたす。

次の「最初は䜎䟡栌で提䟛する」ですが、か぀お「フリヌミアム」ずいう蚀葉があり、「ネットサヌビスは最初は無料で提䟛するこずが必須」ずいう話を思い出したした。今では倚くのサヌビスの暙準ずなっおいる仕組みですね。「合䜵ず買収で芏暡を倧きくする」では、M&Aずいう蚀葉が舞台の䞻人公になりそうです。匊瀟でさえもM&A営業が来るほど䞀般的になりたした。たあ、圌らの目的は手数料での利益だず思いたすが。

競争を支持しない人々

むノベヌション→フリヌミアム→M&Aで段階的に倖堀を埋めおいっお、倖堀が完成したら、競争を行わせないように「いろいろず行動に出る」ずいうのが基本的な流れかず思いたす。PayPal創業者のピヌタヌ・ティヌル(1967-)は「競争は負け犬がするものだ」ず蚀っおいたす。

たるで垂堎支配力を持぀ための指南をしおいるように芋える説明ですが、裏を返すず、このようなこずをするず、床が過ぎおしたえば、瀟䌚を䞍安定化させる可胜性があるずいうこずに泚意しないずいけないず思ったので曞いおおきたした。

賃金を䜎く抑えるための斜策の䟋
倧䌁業のさたざたな掻動の䟋

倧䌁業の超過利最を獲埗するためのさたざたな斜策の䟋ずしお「賃金を䜎く抑える斜策」に぀いお解説したす。

2011幎に6侇4613人のシステム゚ンゞニアがアップル、グヌグル、むンテル、アドビのハむテク4瀟を盞手に、「互いに人材を匕き抜くこずを犁止しお賃金抑制を共謀したずしお起こされた集団蚎蚟」を起こしたした。

ハむテク4瀟は、賃金抑制のために協議しお匕き抜きを犁止する取り決めをしおいたずのこずですが、これは違法行為になりたす。コンプラむアンスずいう蚀葉は䜕凊ぞいったのでしょう。スティグリッツは他にも様々な掻動䟋を玹介しおいたすので、興味のある方はぜひ読んでみおください。

アダム・スミスの芋えざる手
「芋えざる手」はなぜ芋えないのか

自由垂堎の信奉者は、アダム・スミスの「芋えざる手」があるから、垂堎に任せおおけば倧䞈倫ずいう説埗をしおいたが、スミスは「同業者が集たれば、それがたずえ遊興や嚯楜を目的ずしおいたずしおも、必ず倧衆に察する謀議や䟡栌を䞊げる蚈略の話になる」ず譊告もしおいお、その圓時からカルテルは発生するずいう話をしおいたす。

垂堎に任せおおけば補品やサヌビスの生産を効率的に管理できるずいう思想が、これたで深い圱響を及がしおきた。それが資本䞻矩の理論的基盀ずされおきた。だが2䞖玀にわたる研究の結果、私たちはようやく、アダム・スミスの蚀う「芋えざる手」がなぜ芋えないのかを理解した。そんなものは存圚しないからだ。

プログレッシブキャピタリズム P130

200幎に枡る研究の結果、「芋えざる手」が存圚しないこずが刀明したした。なので垂堎を支配しようずする䌚瀟が思いのたたに動いおしたい、瀟䌚が䞍安定になっおきおいるこずもわかりたした。そうするず、瀟䌚をうたくたずめる芏制が必芁になり、それは政府しかできないずスティグリッツさんは結論づけおいたす。

[アメリカの問題の原因] グロヌバル化の倱敗

グロヌバル化の雇甚ず賃金ぞの圱響
グロヌバル化の匊害1雇甚ず賃金ぞの圱響

もっずもわかりやすい䟋ずしお、「高い技術が䞍芁」で「倚くの人手が必芁」な補品を茞入した堎合は、囜内で補造されなくなるから、もずもず補造に関わっおいた未熟緎劎働者の賃金が枛少するか、賃金が枛少しなければ倱業者が増える䟋を䞊げおいたす。

これはどの囜でも起こるこずで、ある皮構造的に回避できない話だず思いたした。

アメリカの䌁業が海倖で補造する理由
グロヌバル化の匊害2䌁業が埗する貿易協定

アメリカの䌁業は「本囜の劎働者の亀枉力を匱らせる」ために、「海倖の安䟡な劎働力を手に入れやすい」貿易協定を政府に芁求し、そのずおりになった。

こんなこずをしたら、本囜の劎働者が䌚瀟に賃䞊げ芁求したら、䌚瀟から「そんなこずを蚀うなら海倖で補造するぞ」ず蚀えおしたうようになっおしたいたす。なんだか滅茶苊茶な気がしたす。

海倖に拠点がある䌁業の皎金の問題
グロヌバル化の匊害3法人皎の問題

アメリカの倧䌁業は海倖の拠点に関する法人皎は、海倖だけで法人皎を払えばいいルヌルにしたした。しかし、そんなこずをするずアメリカ本囜の法人皎は枛っおしたいたす。

さらに、倧䌁業は政府に察しお「法人皎を䞋げないず海倖に拠点を移すぞ」ず脅しをかけるこずもできるようになりたした。

珟に、共和党は2017幎に法人皎率を35%から21に削枛したずのこずです。

共和党は、倖囜に負けないようにアメリカも法人皎を匕き䞋げなければならないず䞻匵し、2017幎に法人皎率を35%から21に削枛した。2001幎および2003幎のキャピタルゲむン課皎や配圓皎の枛皎のずきにも、同様な䞻匵をしおいる。しかしこれたでの枛皎は効果はなく、貯蓄や劎働䟛絊量の増加、成長率の向䞊には結び぀かなかった。2017幎の枛皎でこうした効果が期埅できる根拠はなにもない。むしろ枛皎の結果、10幎埌のアメリカ人の所埗が䞋がる可胜性の方が高い。

プログレッシブキャピタリズム P141

ここたで来るず、アメリカの貿易協定は自虐的なストヌリヌになっおいるず思わざるを埗ない印象です。ここたで倧䌁業に有利にしおもトリクルダりンは幻想でしかないので、蟛い感じがしたす。

[アメリカの問題の原因] 過剰な金融化

2008幎の金融危機以埌の銀行の悪事
金融産業が瀟䌚に䞎える損害

アメリカの銀行は結構悪さをするようで、2016幎にアメリカ3䜍の銀行りェルズ・ファヌゎは、圓人の同意もなく153䞇の個人口座を開蚭しお、勝手にクレゞットカヌドも䜜っお、おたけに手数料たで芁求しおいたりする。

日本でもかんぜ生呜保険が18䞇件の契玄で「保険金の支払拒吊」や「保険料の二重払い」などで、顧客の財産を守るより、顧客の財産を搟り取るようなこずをやっおいたした。

誠実で信頌できるずいうのは過去の遺物
「誠実で信頌できる」ずいうのは過去の遺物

ゎヌルドマン・サックスの前CEOのロむド・ブランクファむン(1954-)は「誠実で信頌できるずいう評刀はか぀おは銀行のもっずも重芁な資産ずしおみなされおきたが、いたではもう叀くさい過去の遺物」だず蚀っおいたす。

スティグリッツは䟋ずしお、自瀟では空売りを仕掛けた商品を投資家に販売しおいるずいう䟋を取り䞊げ、背反行為も甚だしいず思いたす。

ブランクファむンの蚀葉は、銀行家は信甚を倧切にすべきだずいう考え方に終止笊を打った。その蚀葉は事実䞊、銀行家を信じる者はばかだず告げおいる。

プログレッシブキャピタリズム P166

空売りの件は、ヘッゞファンドが以前よくやった手法らしく、2021幎にGameStop株を狙っお空売りを仕掛けおいた「メルビン・キャピタル」をやっ぀けるために、ネット掲瀺板に集たった小口の投資家たちがこぞっお買いたくった「ダム・マネヌ」ずいう映画が最近やっおいたした。買いは䞋限があるけど、売りは䞊限がないから効果はテキメンだっず思いたす。

銀行の本来の業務
銀行の本来の仕事は

ここで原点に立ち戻っお、銀行の本来の仕事に぀いお改めお確認しおおきたしょう。銀行は「䜙剰資金を持぀人」ず「資金を必芁ずしおいる人」ずの間を取り持぀業務をするのが仕事でした。

「原始的な蟲業経枈では、皮の䜙った人が、隣の人に皮を分け䞎えおいた」ずいうように、昔から仲介ずいうのがありたした。

本来の銀行の仕事は、将来のための貯蓄を人を守ったり、䌁業が新しい事業を起こしたりするずきに資金を提䟛するこずで、瀟䌚を安定化させお、囜富を増倧させるこずだずいうこずを確認したした。しかし、珟圚の銀行は利益を高めたいずいう理由から、䌁業ぞの融資はあたり行わなかったり、カネのギャンブルを提案したり、垂堎支配力を高める支揎をしたり、皎金をなるべく払わなくお枈む支揎をするような業務を行うようになっお、本来の業務からズレた「カネにた぀わる仕事」をやるようになっおきたした。それでは次は、スティグリッツが玹介しおいる「進化した銀行業務」の䞭から「クレゞットカヌド」「金融ギャンブル」「合䜵・買収」「租皎回避の支揎」の4぀玹介したいず思いたす。

進化した銀行業務1:クレゞットカヌド
進化した銀行業務1クレゞットカヌド

銀行は、圓初は䌁業ぞの融資が䞭心だったが、次第に「クレゞットカヌド」を䜿った融資に業務をシフトしおいく。

同じ融資をするなら、䌁業よりも消費者のほうが搟取しやすい。䞭小䌁業に融資するより消費者に融資するほうが、楜に倚くの利益をあげられる。

プログレッシブキャピタリズム P168

クレゞットカヌドはあらゆる方面から高い手数料を取れるので、普通にお金を貞すより効率的だずずらえられるようになった。

2022幎床のむオンの営業利益構成比
2022幎のむオンの営業利益構成比
むオン公匏サむト「財務・業瞟情報」より

ここで2022幎床のむオンの営業利益構成比のグラフを芋おみたしょう。むオンはスヌパヌマヌケットやむオンモヌルなどを展開しおいる小売事業の䌚瀟ですが、いろいろな事業をやっおいる䞭で、最も皌いでいるのは利益の3割を占める「総合金融事業」です。これはむオンカヌドなどのクレゞットカヌドのこずです。

スヌパヌマヌケットなどの事業は1割皋床しか皌いでおらず、メむンの利益は金融です。むオンモヌルなどの店舗はクレゞットカヌドを利甚させるための舞台ず蚀っおも過蚀ではないでしょう。

なので、ひずめでは銀行に芋えない䌁業もクレゞットカヌドを利益の柱にしおいる状況です。

進化した銀行業務2:金融ギャンブル
進化した銀行業務2金融ギャンブル

銀行はデリバティブやCDSなどを投資家に販売しおいたす。本文でも曞かれおいたすが、「ラスベガスでは単に『賭け』ず呌ばれおいるものが、りォヌル街では金融業界らしい名前を付けられ」たものです。

スロットマシンの賭けず違う点は、賭ける金額が倧芏暡になるずいう点です。さらに危険床が高たる印象を受けたす。ハむリスク・ハむリタヌンを地で行く感じでしょうか。

しかも、銀行などの金融機関は損倱を出しおも補填しおくれたす。2008幎の金融危機のずきにアメリカ政府はAIGに1800億ドル(箄18兆円)の救枈をしおいたす。

CDSに関しおは、以前のコラムでちょっず解説しおいるので、気になる方は参照ください。
垂堎支配力を持぀ず、ギャンブルに負けおも政府が助けおくれたす。このずきは囜民はおおよそ攟眮されたした。囜富の定矩が「党囜民に高い生掻氎準を持続的に提䟛するためのもの」だったこずはすっかり忘れられおいたす。

進化した銀行業務3:合䜵ず買収
進化した銀行業務3合䜵・買収

銀行は、䌁業の合䜵や買収を支揎する業務も行っおいたす。最初は䌁業の成長を支揎するずいう芁望から生たれたず思うのですが、今は倧䌁業ず倧䌁業の合䜵になるず、手数料も巚額になるので、積極的に支揎しおいるず思いたす。

しかし、倧䌁業を巚倧化しおも「トリクルダりンは幻想」だったので、私たちの生掻が向䞊するこずずは関係がないので、GDPは増えたずしおも、囜の富が増えるこずもない。

進化した銀行業務4:租皎回避の支揎
アップルの租皎回避スキヌム
アップル、アむルランド䜿った節皎
事実䞊の「二重非課皎」(日本経枈新聞)参考
進化した銀行業務4租皎回避の支揎

「倚囜籍䌁業や富裕局が支払うべき皎金を支払わなくおも枈むように支揎する」お仕事です。

どうもいろいろなスキヌムがあるようで、説明を芋おいおも貿易のルヌルの知識がないず理解できない内容でしたので、解説はできたせんが、䟋ずしおアップルが行った租皎回避を玹介したす。アむルランドに子䌚瀟(Apple Sales International)を䜜っお、その䌚瀟が利益を埗おいるようにしお、別の子䌚瀟(Apple Operations International)に配圓を枡しお、、、のように色々ずお金を移動させお、なんずか法人皎を5%くらいにするらしいです。

この図を芋るず、アップルはたるでアむルランドの䌚瀟のようです。

租皎回避は、アップルだけでなく、スタヌバックス、グヌグル、IBM、アマゟン、マむクロ゜フトなどもしっかりやっおいたす。

これは専門家でないずわからないので、このようなスキヌムを銀行が考えおくれるずいうこずでしょう。なかなか、銀行はいろいろなお仕事がありそうです。ただ、いずれも囜富を増倧させおくれる気がしたせん。

金銭欲があらゆる悪の根源ずいうわけではないが、金融産業がアメリカの倚くの病匊の根源であるこずは間違いない。金銭のこずばかり考える銀行家に芋られる近芖県的思考やモラルの厩壊が、経枈や政治や瀟䌚に広たり、それらを毒しおいる。その結果、アメリカ人はさたざたな点で倉わった。実利的になり、利己的になり、近芖県的になった。

プログレッシブキャピタリズム P178

銀行家達のモラルが䜎䞋しおきお「儲かればなんでもいい」ずいう流れになっおきおるけど、金融産業自䜓が重芁であるこずは倉わらず、

事業を開始・拡倧したり雇甚を創出したりするには、資金がいる。金融は決定的に重芁だ。(äž­ç•¥)銀行の本来の仕事ずは、経枈成長に必芁な投資をしようずする䌁業に察し、劥圓な条件で資金を提䟛するこずだ。(äž­ç•¥) 金融産業が本来の仕事を行うようにしおいかなければならない。

プログレッシブキャピタリズム P180

「䜙剰資金を持぀人」ず「資金を必芁ずする人」の仲介を行っお、囜富を豊かにするずいう銀行の本来の姿に戻っおほしいものです。

おわりに

今回のコラムでは、「囜の富」を再確認したのちに、珟代のアメリカ囜民が苊しんでいる䞻な原因ずなっおいる「垂堎支配力の増倧」「グロヌバル化の倱敗」「過剰な金融化」の3点に぀いお玹介したした。

スティグリッツはアメリカの話をしおいたしたが、改めお考えおみるず、これは日本でも同じような構造になっおきおるんじゃないかず思いたす。先日Yahooニュヌスを芋おいたしたら倧䌁業では「倧幅賃䞊げ」が盞次いでいるのに 雇甚者の7割を占める䞭小䌁業の絊䞎が䞊がらない根本原因ずいう蚘事があり、賃䞊げは「倧䌁業は利益や内郚留保金などを掻甚した。」ず曞かれおいたす。それでは䞭小䌁業はどうかずいうずなんずか実斜したが、倧䌁業からのコスト䜎枛の芁請は匷いようで、「バブル厩壊埌の景気䜎迷の䞭でコストカットが圓たり前になったこずもあり、倚少のコストは自助努力で察応しおほしいずいう、ある皮の暗黙の芁請は匷いずいえる。」ず曞かれおいたす。倧䌁業は売䞊や利益が䞊がっおいるのに、いただ30幎前の「バブル厩壊埌の景気䜎迷」の話を説埗材料にしお「垂堎支配力」を行䜿しおいる印象を受けおしたいたす。

働いおいる人からするず「利益を最倧化するための斜策」を必死にやっおいるだけで、その行為が「垂堎支配力を行䜿しおいる」ずいう認識は䜎い、もしくは党くないず思いたすが、萜ち着いお党䜓を芋るずこのたただず栌差が拡倧しおいっお、瀟䌚の治安も悪化しおいくこずは容易に掚枬できたす。さらに、IT化が進んでいっお「人間の行う仕事が枛る」のは確実で将来的には瀟䌚は䞍安定になりそうです。

ブガッティの飛行機
富裕局向けのブガッティのプラむベヌト飛行機
映画『゚リゞりム』第1匟予告線より

映画「21䞖玀の資本」でも登堎した「゚リゞりム」ずいう映画を先日芋たのですが、地球で生きる貧民局ず宇宙に浮かぶスペヌスコロニヌ「゚リゞりム」で生掻する富裕局の話で、地䞊ではドロむドず呌ばれるロボットに管理されお生掻する人間の姿が描かれおいたした。䞻人公はロボットを䜜る工堎で働くずいう蚭定もたるでロボットに奉仕しおいる感じがしたす。SF映画なはずなのに、なんだかこの本を読んだ埌に芋るず、リアルに感じおしたいたした。

アメリカの珟圚の課題である「垂堎支配力の増倧」「グロヌバル化の倱敗」「過剰な金融化」を解決するにはどうすれば良いかですが、「芋えざる手」は存圚しなかったので、党䜓的に亀通敎理をする仕組みが必芁で、それが実珟できるのは政府しかないずスティグリッツさんは蚀いたす。垂堎支配力に支配された瀟䌚に慣れきった政治家や私たちの考えを倉えおいっお、「党囜民に高い生掻氎準を持続的に提䟛するための」囜富を実珟できるず゚リゞりムで描かれた䞖界を回避できる気もしたす。ぜひ䞀床読んでみおほしい䞀冊です。(トリむデザむン研究所 鳥居)

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