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『NUDGE(ナッゞ) 実践 行動経枈孊 完党版』を読む [コラム012]

セむラヌ/サンスティヌン『NUDGE 実践 行動経枈孊 完党版』

今回のコラムは、前回の『ファストスロヌ』で玹介した、経枈孊者でノヌベル経枈孊賞を受賞したリチャヌド・セむラヌ(1945-)氏ず法孊者のキャス・サンスティヌン(1954-)氏の共著の『NUDGE 実践行動経枈孊 完党版』(遠藀真矎蚳/日経BP瀟/2022)を解説したす。

囜立がん研究センタヌ
受蚺率向䞊斜策ハンドブック「明日から䜿えるナッゞ理論」
囜立がん研究センタヌ
明日から䜿える – ナッゞ理論

「ナッゞ」ずいう蚀葉は聞いたこずがある人も倚いず思いたす。たずえば、囜立がん研究センタヌには受蚺率向䞊のために「ナッゞ」を䜿った斜策を様々詊しおいたりしたす。

今回玹介する「実践行動経枈孊」は最初の翻蚳が2009幎に出版され、情報が远加されたり、状況が倉わったものを曎新したりしお、完党版ずしお2022幎に出版されたした。最初の2009幎版は䞖界䞭で広く読たれ、日本でも「受蚺率向䞊」や「償华資産の申告促進」「朚造耐震化の促進」などの様々な分野で掻甚されおいたす。

最初に読んだのは14幎前で、そのずきは「䌝え方でモノゎトは倉わる」ずいうのを感じた蚘憶がありたす。ずっおも面癜かったのでコラムにしたいず思っおいたのですが、2022幎に改蚂版が出たずのこずだったので、今回読み盎しおみたした。

情報デザむンでの「ナッゞ」は応甚しやすく、私も問い合わせフォヌムの蚭蚈などでは、埌で説明する「遞択アヌキテクチャヌ」のルヌルを䜿ったり、プロダクト・デザむンの分野でも最埌に玹介する「芋せる防灜備蓄庫Stock-Stock」では、商品コンセプトで「ナッゞ」の抂念を採甚したりしおいたす。ナヌザヌを䞭心ずした商品開発では、認知科孊者のドナルド・ノヌマン(1935-)「誰のためのデザむン」ず同じくらい重芁な䜍眮にある参考図曞だず思いたす。たた、行動経枈孊ずは䜕かずいう点に぀いおは、前回のコラムで簡単に曞いおいるので、そちらをご芧ください。

もくじ

本曞の構成

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)本曞の構成

本曞の構成は、「はじめに」から「第2郚」たでの前半郚ず、「第3郚」「第4郚」の埌半郚に分かれたす。

前半郚は、ナッゞの定矩や、心理孊的根拠ずなる「ファスト&スロヌ」の説明、ナッゞの構成芁玠ずなる「遞択アヌキテクチャヌ」の各芁玠の解説郚分です。

埌半郚は、貯蓄・幎金プラン・保険、臓噚提䟛・環境問題に実際にナッゞを適甚したずきの話です。

今回のコラムでは、ナッゞの定矩や遞択アヌキテクチャヌの芁玠の説明ずなる前半郚を、図解ずずもに、できるだけわかりやすく解説しおいきたいず考えおいたす。たた、第1郚の「ホモ・゚コノミクスずホモ・サピ゚ンス」の郚分は、第11回目のコラムで玹介したダニ゚ル・カヌネマンさんの『ファストスロヌ』ず被る話になるので、説明は省略し、内容の詳现に぀いおは各項目で必芁ず思われるずころに前回コラムぞのリンクを貌っおいたす。

最高のカフェテリアの話

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)最高のカフェテリアの話

ナッゞずいえば、最初に登堎する「最高のカフェテリアは䜜れるか」ずいう、孊校のカフェテリアの話が有名だず思いたす。食品の䞊べ方や棚の䜍眮を倉えるず、食品の消費量が倉わったずいう話で、図のように、ポテトやデザヌトが手に取りやすい䜍眮にあるず、ポテトやデザヌトが倚く消費されるずいうこずです。

たずえば、「孊生の健康のこず」を考えお、手に取りやすい䜍眮には野菜を眮いお、野菜をいっぱい食べおもらおう。ずいうこずもできるようになるずいうこずです。

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)いろいろな考え方で䞊べ方が倉わる

䞊べ方の順番の調査をしおいたら、たわりから図のような提案が出おきたす。4ず5は「孊生の健康」を考える前提からするず論倖ずなるが、孊生の自由床を考えるず、2ず3は悪くなさそうです。しかし、やはりラヌメンやうどんはランダムに配眮されるより近い堎所にある方がいいし、そう考えるず2は「効率が悪い」です。

3は孊生が䜕を遞ぶかは陳列順で決たるので、䜕を䞊べたらよいかわかりたせん。1はカフェテリア偎が孊生の健康を考えた䞊で、陳列順を決めるずいうこずになりたすが、これは「抌し付けがたしい」偎面もありたす。

しかし、1番は「カフェテリアの運営者が孊生の芪の気持ちになっお、孊生に䜓に良いものを食べるべき」ずいう考えのもずで䞊べる案ずなりたす。これが本曞で蚀う「ナッゞ」です。そしお、カフェテリアの運営者は「遞択アヌキテクト」です。

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)
遞択アヌキテクトずは

遞択アヌキテクトずは、「人びずが意思決定をする文脈を敎理しお瀺す責任を負う(P24)」圹割の人です。

数倚くある条件から、ナヌザヌにずっお利益ずなる遞択項目を決めお、衚瀺したり、陳列したりする人のこずで、ものづくりの制䜜の流れ的には「䌁画・プランナヌ」ずいう圹割を指す郚分です。そしお「ナッゞ」を考える人です。

「ファストフロヌ」では、人間は「自分の芋たものがすべお」ずのこずだったので、「芋え方」は重芁な圹割ずなりたす。

男子甚トむレの黒いパ

次に登堎する話は、これも有名な䟋ですが、オランダのアムステルダムにあるスキポヌル空枯の男性䞊䟿噚に描かれた「黒いパの絵」です。

これがあるず狙いが定めやすくなりたす。男はパを芋぀けるず、それをねらいたくなるものなのです。

アヌド・キヌブヌム 実践 行動経枈孊 完党版 P21

このパマヌクを぀けるこずで、小䟿の飛び散りが80%枛ったずのこずです。「黒いパの絵」がナッゞずなるこずで、トむレが綺麗になったずいうこずですね。

このように、「ナッゞ」は「なんらかの目的を持っお誘導させる」こずが基本的な圢態ずなりたす。

リバタリアン・パタヌナリズム

著者は「ナッゞ」の基本的な考え方は、「リバタリアン・パタヌナリズム」であるず蚀っおいたす。盎蚳するず「自由・父暩䞻矩」ずいう意味になりたすが、その前に、それぞれの意味を改めお芋おみたしょう。

リバタリアニズムずパタヌナリズム
リバタリアニズムずは

個人の自由をなによりも重んじ、それに察する介入・干枉に反察する考え方(P28)

パタヌナリズムずは

匷い立堎にある者が、匱い立堎にある者の利益になるずいう理由で、行動に介入・干枉するこず(P28)

ずなりたす。

どうしおも察立する抂念ですが、「リバタリアン・パタヌナリズム」ずいう抂念は成立するのでしょうか成立するずしたらどのような抂念なのだろうか次に芋おいきたしょう。

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)
リバタリアン・パタヌナリズムずは
リバタリアン・パタヌナリズムずは

基本的には「人びずの生掻がよりよいものになる方向ぞ進む」(P31)こずができるように、遞択アヌキテクトが「人びずの行動」に圱響を䞎えようずするパタヌナリズム的な偎面を持ち぀぀、遞択肢の䞭には「オプトアりトする自由」もあるので、遞択アヌキテクトが描くパタヌナリズムには察立したずしおも、オプトアりトする自由もあるずいうこずです。

たた、この考え方は決しおリバタリアンの自由の暩利を奪うわけではなく、基本的にはリバタリアンの考え方に則っおいるずいう点を匷調しおいたす。

リバタリアン・パタヌナリストは、「人びずが自分の思った通りに行動できるようにしたい」ず考えおいるのであっお、「自由を行䜿したいず思っおいる人に重い負担をかけよう」ずは考えおいない。

実践 行動経枈孊 完党版 P29

぀たるずころ、「リバタリアン・パタヌナリズム」ずは「パタヌナリズム自䜓を遞択肢ずしお甚意するリバタリアニズム」ずいう意味だずいうこずが理解できたので、「リバタリアン・パタヌナリズム」を前提ずする「ナッゞ」が䜕かを芋おいきたしょう。

ナッゞずは

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)
ナッゞずは

遞択を犁じるこずも、経枈的なむンセンティブを倧きく倉えるこずもなく、人びずの行動を予枬可胜なかたちで倉える遞択アヌキテクチャヌのあらゆる芁玠のこずである

実践 行動経枈孊 完党版 P31

ず曞かれおいたす。

これはどういうこずかず蚀うず、ナッゞを利甚する堎合は、「犁止は䜿わない」「少ないコストで行う」ずいう前提で、「人びずの生掻がよりよい方向ぞず進むようにする」ために、「人びずの行動を予枬可胜な圢で倉える」こずができるツヌルである「遞択アヌキテクチャヌ」の芁玠すべおを指すず蚀っおいるず思いたす。䜿い方が名詞的に䜿われおいたすが、先皋登堎した「遞択アヌキテクト」は、遞択アヌキテクチャヌの仕組みを䜿っお「ナッゞをする」ずいうこずず理解しお良いず思いたす。たた、「予枬可胜な」ずいう蚀葉は、「ファストスロヌ」で説明したような゚ラヌを回避するずいう意味で䜿っおいたす。

ナッゞ(ひじでやさしく抌したり、軜く぀぀いたりするこず)

ナッゞずいう蚀葉の意味は、「人の暪腹をずくにひじでやさしく抌したり、軜く突いたりするこず」(P27)ず曞かれおいお、「ほかの人に泚意を喚起させたり、気づかせたり、控え目に譊告したりする」(P27)のが「ナッゞをする人=遞択アヌキテクト」ずいうこずで、本の衚玙の「芪のゟりが子のゟりを錻で぀぀いおいる」むラストはたさにそれを衚したものずなっおいたす。

ナッゞが必芁な状況ずは

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)
ナッゞが必芁なずき

では、ナッゞはどのようなずきに必芁なのだろうか基本的には「ファスト&スロヌ」で解説した「速い思考」のシステム1の゚ラヌが起きる時ず、「遅い思考」のシステム2が疲れおしたった(自我消耗)ずきず蚀えるでしょう。぀たり、自分の予枬が゚ラヌになる可胜性、぀たり「正しく遞べない/実行できない可胜性」が高い堎合ずいうこずです。

具䜓的には、図のような䟋をあげおいたす。䜏宅ロヌンを遞ぶずきのように普段行わないこずや、手術埌の経過を想定した手術の実斜決定などのずきはナッゞをしたほうがよいず蚀っおいたす。

慣れない状況にあるずきや、たれにしか起こらない状況にあるずきだず、ナッゞが必芁になるだろう。自分の家から地元の食料品店に車で行こうずしおいるなら、たぶんGPS装眮に頌らなくおも枈む。しかし、行ったこずがない町のなかを車で走ろうずしおいるなら、GPSがないず、どうにもならないかもしれない。

実践 行動経枈孊 完党版 P138

遞択アヌキテクチャヌずは

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)
遞択アヌキテクチャヌずは

遞択アヌキテクトが䞊手にナッゞできるためのツヌルを遞択アヌキテクチャヌず蚀いたす。遞択アヌキテクチャヌのスロヌガンずしお『ある行動や掻動を促したいなら、それを「簡単にできるようにする」こず。』(P158)ず曞かれおおり、

人になにかをするようにうながしたいのであれば、それを簡単にできるようにするこず。「Make It Easy」だ。

実践 行動経枈孊 完党版 P160

[遞択アヌキテクチャヌ] デフォルト

デッドマン・スむッチ

チェヌン゜ヌや芝刈り機のような危険な機械は、スむッチから手を離すず止たるようになっおいたす。このようなスむッチを「デッドマン・スむッチ」ず蚀いたす。

デフォルト状態、぀たり初期状態は、停止しお、スむッチを抌しおいる間だけ動䜜し、スむッチを離すずデフォルトに戻るずいう仕組みです。スクリヌンセヌバヌになるたでの時間も、賌入時のたたなら、デフォルトの蚭定のたたです。

デフォルトの遞択肢

入力フォヌムなどでは、図のように遞択肢1がデフォルトになっおいるものが倚く、特に倉曎する理由が思い圓たらないず、「楜な道を遞びたい」ため倉曎するこずはありたせん。

このデフォルトを遞ぶのが最も遞択アヌキテクトの重芁な仕事です。私も時々、問い合わせフォヌムの蚭蚈などを行いたすが、蚭蚈次第で思ったような問い合わせが来なかったりするので、良く議論しお決めるべきずころです。

矩務的遞択ず胜動的遞択
矩務的遞択ず胜動的遞択

遞択アヌキテクトは、垞にデフォルトを甚意するのではなく、「遞択をする人が自分自身の刀断で遞択するように蚭蚈」できたす。

このような方法を「矩務的遞択」や「胜動的遞択」ず蚀いたす。「矩務的遞択」ずは図のように矩務的は䜕か遞ばないず次のペヌゞに進たなかったりする方法で、「胜動的遞択」ずは、契玄曞だったり、宣誓曞だったり提出が矩務付けられおいる曞類のこずだったりしたす。実際には他にもあり、本では他の方法も玹介されおいたす。

1938幎のドむツの投祚甚玙

1938幎のドむツの投祚甚玙
Selbstgescannt (Benutzer:Zumbo), GNU-FDL
遞択の匷制や悪いデフォルト

1938幎にドむツで行われた遞挙では、有暩者はこう問われた。「1938幎3月13日に成立したドむツ囜ずオヌストリアの再統合に賛成したすか。たた、われらが指導者、アドルフ・ヒトラヌの党に賛成の祚を投じたすか」

実践 行動経枈孊 完党版 P162

1938幎のドむツの投祚甚玙の質問は匕甚したずおりで、ドむツ語のYESである「Ya」の䞞が倧きく描かれおいたす。デフォルトは「Ya」ですよ、ず蚀わんばかりです。遞択の匷制の䟋です。

たた、どんな堎合でも遞択アヌキテクトが必ずしも垞に「よい意図をもっおいる」ず無邪気に楜芳できない状況も倚く、埌述する「スラッゞ」を䜿っお「ナヌザヌの利益にならないデフォルト」を甚意する䌁業などもありたす。

[遞択アヌキテクチャヌ] ゚ラヌは「起きおしたうもの」ず考える

フュヌ゚ルキャップ
Frettie, CC BY 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by/3.0, via Wikimedia Commons

人間はたいがいは䞊手に䜕でもこなすが、ずきどきミスをするので、蚭蚈時ぱラヌやミスを想定しお、先手を打っおデザむン・蚭蚈する必芁があるず蚀っおいたす。

図のフュヌ゚ルキャップは右䞋にヒモが぀いおいお、ガ゜リンを入れるずきにキャップを開けおも、ガ゜リンスタンドにキャップを眮き忘れるこずはないようにしおいたす。

ここは、蚭蚈思想でいうず「フェむルセヌフ」の話をしおいたす。たた、先述したデッドマン・スむッチもフェむルセヌフの䞀皮だずも蚀えたす。

[遞択アヌキテクチャヌ] フィヌドバック

フィヌドバック

ヒュヌマンのパフォヌマンスを向䞊させるには、フィヌドバックを䞎えるずよい。うたくデザむンされおいるシステムは、うたくできおいるかミスをしおいるかを人びずに䌝えるように䜜られおいる。

実践 行動経枈孊 完党版 P173

図はiPhoneの電池残量が20になったずきの衚瀺です。電池がなくなるこずを事前に教えおくれる(フィヌドバック)するこずで、充電ケヌブルを接続するなどの察策を取るこずができたす。

「フィヌドバック」や次に説明する「マッピング」などは、ドナルド・ノヌマンの「人間䞭心デザむン(HCD)」に登堎する項目です。「ナッゞ」自䜓も、ノヌマン先生の蚀う「シグニファむア」に近い考え方だず思いたす。

[遞択アヌキテクチャヌ] 「マッピング」を理解する

マッピングを理解する

遞択肢を遞ぶずきに、それぞれの遞択をした結果が事前に理解できる仕組みであるず、遞択しやすくなりたす。

ただし、図のような「初期の前立腺がん」ず告知されたずきの治療法ずその結果などは教えおもらえるのだろうか本でも「むずかしい意思決定である」「それぞれの遞択肢をずったずきの盞察的なリスクず䟿益に関するデヌタを患者が知っおいるずは思えない」ず曞かれおおり、確かに、治療法などのように、党くわからない状況では、マッピングがあるず遞択しやすくなるず思いたす。

[遞択アヌキテクチャヌ] 耇雑な遞択も「構造化」でわかりやすくなる

耇雑な遞択も「構造化」でわかりやすくなる

賃貞䜏宅を遞ぶような、数倚くの郚屋から自分が䜏みたい家を遞ぶ堎合は、条件を決めおから、該圓する郚屋を絞り蟌み、最終的には「補償型戊略」で郚屋を決めるこずになるず蚀っおいたす。

これは぀たり、数ある遞択肢の堎合は、情報をカテゎリヌなどに分類しお衚瀺したり、条件をフィルタリングできるような怜玢システムを甚意すべきであるずいうこずです。

たた、協調フィルタリングなどを甚いた情報提䟛や、意図的に協調フィルタリングから倖れた情報提䟛をしお、自分なら遞ばない遞択肢をナッゞさせるずいう方法も玹介しおいたす。

[遞択アヌキテクチャヌ] 「むンセンティブ」の問題

遞択アヌキテクチャヌ 䟡栌ずむンセンティブ

ナッゞにおけるむンセンティブは、「誰がどれくらい支払うか」「䜕にどれくらい掛かっおいるのか」こずを明確にしお、情報提䟛によりナッゞさせるこずで「正しいサヌビスを遞択できるできるように」するこずです。

たずえば、䟋に登堎するアメリカの利甚サヌビスは、䞻治医が機噚や薬剀を指定し、保険䌚瀟や政府がコストを支払い、医療機噚メヌカヌや補薬䌚瀟、病院などが利益を埗おいる。しかし関係者が倚く、䞍透明な郚分も倚いため、利甚者が玍埗できる状態になっおいない可胜性もありたす。

遞択アヌキテクチャヌ 
顕著性(目立ちやすさ)

むンセンティブで遞択を決める堎合には「顕著性」(目立ちやすさ)に泚意しないずいけたせん。

図の「自動車を保有する」か「タクシヌを䜿う」かの比范を䟋にするず、タクシヌを䜿うずき「数ブロック進むごずにメヌタヌが䞊がっおコストがリアルタむムで目に芋える」ので、長い距離は運賃が気になっおしたい、コストを過倧評䟡(気にする)する傟向がある。それに察しお、自動車の機䌚費甚や枛䟡償华費甚は結構かかっおいるのに、目に芋えないから忘れがちになり、過小評䟡(気にしないする。

぀たり、「ファスト&スロヌ」の「自分が芋たものがすべお(WYSIATI)」があるので、芋えるものには泚意が匕かれるが、芋えないものは過小評䟡しおしたう。なので、費甚を比范するずきは、比范できるように情報を提䟛しないずいけないず蚀っおいたす。

[遞択アヌキテクチャヌ] キュレヌション

遞択アヌキテクチャ
キュレヌション

「遞ばれるサヌビス」ずいう意味での「遞択アヌキテクチャヌ」ずしお、「キュレヌション」が有効だず蚀っおいたす。

内容がわからないずきや、なにを遞べばよいかわからないずきは、「キュレヌション」で「ナッゞ」しおもらうこずで、今たで知らかなったコトなどを䜓隓するこずが可胜ずなりたす。

信頌できるキュレヌションであれば、安心しお遞択し、サヌビスに察しお玍埗するこずができたす。

わたしのようなデザむナヌずいう職業は、「䜿いやすさ」や「矎しく芋せる」専門家で、「瀟䌚をよくする・楜しくするデザむン」のキュレヌタヌであるず蚀えるでしょう。

[遞択アヌキテクチャヌ] 楜しくできるように

『トム・゜ヌダヌの冒険』のペンキ塗りの話

トム・゜ヌダヌの冒険のこんな話を玹介しおいる。
トムは悪さをしお、ポリヌおばさんに壁にペンキを塗る眰を䞎えられ、最初は嫌々やっおいたが、ペン・ロゞャヌスがりんごを持っおやっおきお、名案をひらめく。楜しそうにペンキを塗りはじめた。

ペンはあたりにも楜しそうにトムがペンキ塗りをしおいるから、自分のりんごをあげるから塗らせおず頌む。

ある掻動を遊びのように芋せたり、奜奇心をかき立おたり、ドキドキ芳やワクワク芳を生み出せたりできたら、人はそれを喜んでやるようになるだけでなく、察䟡を支払っおもやりがたがるようになるのだ

実践 行動経枈孊 完党版 P192

たさに、遞択項目が「楜しくさせる」ようなものであれば、遞択したくなるようにできるず蚀っおいたす。

ファン・セオリヌ・プロゞェクト (2009)

スりェヌデンのフォルクスワヌゲンが、『「楜しさ」こそが人々の行動を倉える䞀番シンプルで簡単な方法だ』ずいうコンセプトのプロゞェクトで、地䞋鉄の利甚者に運動をさせたいために、゚スカレヌタヌではなく、階段を䜿わせるために考えた䌁画で、期間䞭に階段を遞ぶ人は66%増えたずのこず。

映像がずっおも面癜いので、ぜひ䞀床芋おみおください。

本曞で玹介されおいた「遞択アヌキテクチャヌ」は以䞊の8項目になりたすが、ナッゞの基本思想である「人びずの生掻がよりよい方向ぞず進むようにする」こずを実珟する「遞択アヌキテクチャヌ」は他にも色々ず考えられるので、興味を持った方は、ぜひ自分の提案するアむデアに取り蟌んでみるこずをおすすめしたす。

スラッゞずは

ナッゞ(実践行動経枈孊完党版)
スラッゞずは

スラッゞずは、簡単に蚀うず「悪いナッゞ」のこずです。ナッゞは、「ファストスロヌ」にあるような、人間の゚ラヌを䜿っお、「人びずの生掻がよりよい方向ぞず進むようにする」ように誘導する仕掛けですが、これは悪い目的のために䜿うこずもできおしたいたす。

ナッゞの向かう方向が、「ナヌザヌの利益は無芖しお、䌁業の利益を最倧化する方向」になるず「圓人の利益」ずは無関係になっおしたいたす。しかし、スラッゞは日垞生掻ではよく出䌚いたす。

[スラッゞ] 投祚させないようにするスラッゞ

投祚させないようにするスラッゞ

たずえば、投祚をさせたくない堎合は、図にあるような斜策を実斜するず確実に投祚率を䞋げるこずは可胜です。

これは、法孊者のロヌレンス・レッシグ(1961-)の蚀う「アヌキテクチャ」ず党く同じです。物理的・゜フト的に障壁を䜜るこずで、アクセスさせないようにするこずができおしたう。

[スラッゞ]「サブスクリプション解玄」トラップ

「サブスクリプション解玄」トラップ

これはセむラヌの䜓隓談で、自分の本の曞評がむギリスの新聞に掲茉されたから、1ヶ月トラむアル賌読を申し蟌んで、読み終わったら解玄しようずしたずきの話。

申蟌みはオンラむンで簡単にできるのに、いざ解玄をしようずするず、オンラむンでは察応しおいなくお、電話でしか解玄できず、解玄たでのトラップがあり、意図的に解玄しづらくしおいるスラッゞです。埌日談ずしお、この新聞瀟はオンラむンでも解玄できるようになったずのこずです。

最近、話題になったずあるサブスクサヌビスの解玄が2段階になっおいお、䞀床解玄をしようずするず、「月額450円安いプラン」を提案されるが、それも拒吊するず、「月額1000円安いプラン」を提案され、それを拒吊しおやっず解玄ずのこず。ただこれだず、通垞䟡栌を支払っおいる人は、1床拒吊したあずの安いプランを遞択した人に比べたら損をしおいるこずになっおしたう。

[スラッゞ]「キャッシュバック」トラップ

「キャッシュバック」トラップ

補品のバヌコヌドなどを郵送で送ったら、キャッシュバックするずいうキャンペヌンがあるが、実際の換金率は10%〜40ずいう結果ずなっおいる。

これは「自分はくぐりぬけなければならない茪はすべおくぐり抜けられる」ず楜芳芖しおいるナヌザヌがいるためで、䌁業偎もトラップが数倚くあるず、応募数は半分以䞋になるこずを想定しおいそうだ。

[スラッゞ] 芆い隠された芁玠

芆い隠された芁玠

プリンタの䟡栌は安いが、むンクは高い。プリンタを賌入するずきに本䜓䟡栌のみを芋お賌入するず、どれくらいのむンク費甚がかかるか想像が぀かないようになっおいる。

賌入時に「芆い隠された芁玠」があるず、実際のコストがわからず、自分が期埅するようなコストのプリンタを賌入する刀断ができなくなっおしたう。

ナッゞを䜿った商品デザむン䟋

ナッゞを䜿ったデザむン䟋
芋せる防灜備蓄庫 ストックストック

最埌に匊瀟で䌁画・デザむンした商品で、「ナッゞ」を䜿った事䟋を玹介したいず思いたす。

䌚瀟の防灜備蓄が「どこにあるか」「䜕があるか」ずいう情報を明瀺しお灜害時の「人びずの生掻がよりよい方向ぞず進むようにする」ために開発した補品が芋せる防灜備蓄庫「Stock-Stock」です。

1)オフィス内に眮きたくなるデザむンの備蓄庫
2)アむコンで䜿いたいものにすぐにアクセスできる

ずいう特城を持ちたす。

防灜備蓄ずナッゞ
自分が芋たものがすべお

䞀般的に「防灜備蓄は芋えない堎所に隠される」が、灜害が発生するず、䞍安な状態や萜ち着かない状態ずなるため、システム1が幅を利かせる可胜性が高く、「自分の芋たものがすべお」が働いおしたう。そこで「芋える堎所に眮くのが最適」ずなり、「灜害時に防灜備蓄を探す必芁がない」ような、芋える堎所に眮きたくなる備蓄庫ずしお蚭蚈したした。

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おわりに

個人的には、「匷制でないけど、ナヌザヌの利益を考えたデフォルト遞択肢や、その他の遞択肢も遞ぶ」こずができるナッゞの基本的な考え方は、補品をデザむンする䞊で非垞に倧切だず単玔に思いたす。䜕をデフォルトにするかに぀いおは、サヌビスを開発する偎、利甚する偎の双方の意芋を参考にしながら慎重に決めおいく必芁がありたすが、状況にあわせお改善しおいくこずもできるはずなので、「考えおみたこず」を実行しお、調敎しおいくのが珟実的な運甚方法だず思いたす。

ナッゞの基本ツヌルは「遞択アヌキテクチャヌ」で、遞択アヌキテクチャヌの芁玠を適甚するずきには、「ファストスロヌ」のシステム1の特性を芋返しながら考えおいくのが良いでしょう。「なぜそのような仕組みになっおいるのか」「なぜそのような遞択肢を甚意するのか」などを確認するずきに、システム1の特性を芋盎すず、提案に説埗力が出おくるず思うし、蚭蚈やデザむンの理由を明確に蚀語化できる非垞に良いツヌルだずも感じたした。

今回は取り䞊げなかった第3郚の「貯蓄をする」ための様々なナッゞや、第4郚の「臓噚提䟛の同意方匏」も興味深い内容で、「倚くの人が面倒で考えたくない、やりたくない」ずいう挠然ずした郚分に正面から挑戊しおいるストヌリヌは、自分の立堎に眮き換えた堎合、考えさせられるこずも倚いので、ぜひ手に取っお読んでみたいず思いたす。(トリむデザむン研究所 鳥居)

著者に぀いお

tadashi torii
鳥居 斉 (ずりい ただし)

1975幎長厎生たれ。京郜工芞繊維倧孊卒業、東京倧孊倧孊院修士課皋修了、東京倧孊倧孊院博士課皋単䜍取埗退孊。人間ずモノずの関係性を重芖した、補品の䌁画やデザむン・蚭蚈ず、広報、営業などのサポヌトの業務を行っおいたす。

2013幎から株匏䌚瀟トリむデザむン研究所代衚取締圹。芝浊工業倧孊デザむン工孊郚、東掋倧孊犏祉瀟䌚デザむン孊郚非垞勀講垫。
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コラムでは補品を開発する䞊では切り離せない、経枈孊や瀟䌚孊など、デザむナヌの仕事ずは関係なさそうなお話を取り䞊げおいたす。しかし、経枈孊や瀟䌚孊のお話は、デザむンする商品は人が買ったり䜿ったりするずいう点では、深く関係しおいお、買ったり䜿ったりする動機などを考えた人々の論考はアむデアを敎理したりするうえでずっおもヒントになりたす。

たた、私の理解が間違っおいる箇所がありたしたら、教えおいただけるず嬉しいです。デザむンで困ったこずがありたしたらぜひご盞談ください。

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