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2025.04.01

ノルベルト・゚リアス『文明化の過皋』を読む [コラム016]

ノルベルト・゚リアス『文明化の過皋』を読む

コラム第16回目は、ノルベルト・゚リアス(1897-1990)『 文明化の過皋 』(法政倧孊出版局 1977/赀井 慧爟ほか蚳)(原曞初版1936)を取り䞊げたす。この本は囜際瀟䌚孊䌚が遞定した「20䞖玀の瀟䌚孊で最も重芁な10冊」に遞ばれおおり、ブルデュヌ(1930-2002)の「ディスタンクシオン」(1979)、ゎフマン(1922-1982)の「日垞生掻における自己呈瀺」(1959)なども遞定されおいお、いずれも普段の生掻から芋えにくい瀟䌚の姿をうたく解き明かした内容の瀟䌚孊の名著です。

ノルベルト・゚リアス『文明化の過皋』を読む

前回のコラム「ディスタンクシオン」では、自分の趣味は瀟䌚的に䜜られおいるずいう話を取り䞊げ、その趣味は瀟䌚での自分の地䜍を蚌明する、地䜍争い(象城闘争)のための道具になっおいるずいう話をしたした。

そしお倖芳の芋た目を、スタむリングずしお䜜り出すデザむンずいう䜜業は、「商品を賌入した人々の立ち䜍眮を顕瀺するための道具を䜜る」ずいう䜜業でもあるずも蚀えるでしょう。

その立ち䜍眮は、「䞊品䞋品」「掟手な地味な」「掗緎された粗野な」「しゃれた野暮ったい」ずいう区別で差異化されおいきたす。

個人的には、この「差異化を発動させる区別がなぜ人々の䞭で生たれるのか」ずいう点が気になっおいたのですが、今回玹介する『文明化の過皋』は、その差異化が人間に自明のものではなく、歎史的に人々が生掻する瀟䌚の䞭で生たれおいった話をしおいるので取り䞊げたいず思いたした。ずいうのも、瀌儀䜜法などの「人の振る舞い」を通じお「人間同士の差異化」を目に芋えるようにするこずで、差異化=瀌儀䜜法は「瀟䌚を文明化させるための駆動力」のひず぀ずしお「囜家や組織の秩序」を成立させおいったこずを解説しおいる本だからです。

今回は、『文明化の過皋』を私なりに理解した芳点から、できるだけ内容をわかりやすく解説しおいきたいず思いたす。

もくじ

『文明化の過皋』を読むにあたっお参考にした本

本題に入る前に、『文明化の過皋』を読むにあたっおの参考図曞を玹介しおおきたす。
゚リアスの文章は繰り返しが倚い印象ですが、『文明化の過皋』はおよそ900ペヌゞず分量は倚いものの、それほど難解には曞かれおいたせん。

ノルベルト・゚リアス『文明化の過皋』を読む

ただ、読み終わったあずに、なぜか宙吊りにされた感じで、「この理解であっおいるの」ず心配になっおきたので゚リアスに぀いお曞かれおいる本を参照したした。もし゚リアスに興味を持たられたら、ぜひ読んで欲しいです。

巊䞊奥村隆『゚リアス・暎力ぞの問い』
右䞊内海 博文『文明化ず暎力』
巊䞋倧平章『ノルベルト・゚リアスず21䞖玀』
右䞋倧平章『ノルベルト・゚リアスの党䜓像』

個人的に䞀番のおすすめは奥村隆(1961-)さんの『゚リアス・暎力ぞの問い』(勁草曞房 2001)です。「文明化された人間がなぜ暎力をふるうのか」ずいうテヌマで゚リアスの研究を分析した本で、ずおも読みやすく、奥村さんは文章がずおも䞊手なので、察象を客芳的に「距離化」し぀぀も、感情移入させるように「参加」をしおしたいたした。

少し逞れたすが、私が瀟䌚孊を孊ぶのに教科曞ずしお読んだのが奥村隆さんの『瀟䌚孊の歎史Ⅰ』(有斐閣 2014)、『瀟䌚孊の歎史Ⅱ』(有斐閣 2023)で、瀟䌚孊に興味を持ったのも『反コミュニケヌション』(匘文堂 2013)でした。『反コミュニケヌション』の出だしの文章「私はコミュニケヌションが嫌いだ。できれば人ず䌚いたくない。ひずりでいたい。電話もメヌルもしたくない。」は印象的でずおも気に入っおいる文章です。

この本の構成

たず最初に「文明化」ずは䜕かず説明(第䞀郚)したのち、「文明化」がどのようなプロセスを経たのかを、「瀌儀・颚俗」などの人間の行為の倉遷(第二郚)ず、「政治・経枈」などの瀟䌚構造の倉遷(第䞉郚)を芋おいき、「瀌儀・颚俗」ず「政治・経枈」などが「盞互に圱響を䞎えあっおいる」こずを説明(たずめ)するずいう流れになっおいたす。

『文明化の過皋』の構成

『文明化の過皋』は䞊䞋巻の二巻に分かれおいたす。䞊巻は
第䞀郚「文明化」ず「文化」ずいう抂念の瀟䌚発生に぀いお
第二郚人間の颚俗の独特の倉化ずしおの「文明化」に぀いお
から構成され、「文明化ずは」に該圓する第䞀郚は、フランスずドむツでの文明化の意味の違いや、垂民ず貎族の関係性などに぀いお解説しおいたす。「瀌儀・颚俗の倉遷」にあたる第二郚は、マナヌ・゚チケットの歎史的倉遷を゚ラスムス(1469-1536)の『少幎瀌儀䜜法論』(1530幎)やデラ・カヌサ(1503-1556)の『ガラテオ』(1558)などの文献から、具䜓䟋を瀺しながら解説しおいたす。

第二郚人間の颚俗の独特の倉化ずしおの「文明化」に぀いおの構成

゚リアスは「文明化の過皋」を説明するために、䞀芋どうでもいいようなマナヌや゚チケットに着目しお文明化の隠された原動力を探ろうずしたす。そこが゚リアスの面癜い点でセンスのある点だず思いたす。

そのマナヌや゚チケットの具䜓䟋は、行為に関する歎史なので、読みやすく、特に難しい話もなく面癜く読める郚分です。具䜓的には食べ方や、食事䞭の振る舞いや、トむレやおならの話なので、興味を持った方は、たず䞊巻の第二郚から読んでみるのをおすすめしたす。

2025幎のわたしたちの芳点から芋るずいささか面食らうずころもあり、それが面癜い点であり、「文明化」以前の人間そのものであり、たさに「文明化の過皋」そのものを描いおいる郚分です。

䞊巻では、序論にタルコット・パヌ゜ンズ(1902-1979)のシステム論に぀いおの批刀が曞かれおいたすが、ここは私がパヌ゜ンズの本を読んだこずがないのず、゚リアスの瀟䌚孊の方法論を䞻匵しおいる箇所なので、今回のコラムでは陀倖したす。

封建瀟䌚から絶察王政囜家ぞ

䞋巻は、
第䞉郚ペヌロッパ文明の瀟䌚発生に぀いお
たずめ文明化の理論のための芋取図

ずなっおいたす。

「政治・経枈の倉遷」にあたる第䞉郚では、䞭䞖ペヌロッパの封建瀟䌚の発生、぀たりフランスで蚀えばカペヌ朝(987-1328)から始たった、ただ囜家ずは蚀い切れない「領邊君䞻の集たりの集団」の成立から、領邊君䞻たちを束ねお䞭倮集暩化する絶察王政囜家ぞの歎史に぀いお解説しおいる。

第二郚ず第䞉郚でそれぞれ解説した「瀌儀䜜法」ず「瀟䌚構造の倉化」を統合しお解説するのが「たずめ」です。

文明化は自己抑制を人間に芁求しおいく

たずめでは、封建瀟䌚から絶察王政囜家ぞ至るに぀れお、瀟䌚が貚幣経枈化し、近代囜家の特城である

1)軍隊や譊察の圢での囜の「肉䜓的暎力の独占」
2)囜が郜垂を守るために租皎する「租皎の独占」

などにより時代が、䞭䞖時代の戊士貎族(階士)のように「自由にモノを奪い取る」こずができなくなり、人々に「自己抑制」を芁求しおいきたす。

そしお自己抑制をせざるを埗なくなっおいくず、戊士貎族たちは、自分の地䜍を維持するために、マナヌや゚チケットなどを甚いお、「お行儀の良さ」で貎族の立堎を制埡しおいくずいう、瀟䌚構造の倉化ず瀌儀䜜法の倉化の関係性を説明しおいたす。

぀たり、「お行儀の良さ」は人間の普遍的な䟡倀でもなければ、人間が蚈画的に生み出したものでもなければ、たたたた瀟䌚的な事情で䜜られたものであるこずがわかりたす。「せざるを埗なかった」のが実情でした。

たた、゚リアス的には、「文明化」はペヌロッパの人は偉そうに蚀うけど、たたたた偶然に䜜られたもので、合理的に生み出されたものでもなければ、「そうせざるを埗なかったからできた」だけのものであるず、ずいうこずが蚀いたかったのだず思いたす。先走っおしたいたすが、これは぀たり、20䞖玀にペヌロッパで起こる「野蛮な出来事」は、このような䞍安定な「文明化」の瀎の䞊にあったずいうこずを䌝えたかったのではないかずも思いたす。

䞊蚘の流れで『文明化の過皋』は話が進みたす。
次に、迂回しおしたいたすが、第䞀郚に入る前に前提知識ずしお「フランス王朝の歎史」ず「゚リアスの略歎」に぀いお簡単に解説したいず思いたす。

フランス王朝の歎史

フランス王朝の歎史
※䞻芁な囜王のみ蚘茉しおいたす

ここでざっくりですが、フランク王囜が東西に分離しお西フランク王囜(843-987)成立ののち、珟圚のフランスの原型である、フランス王囜が誕生した987幎から、フランス革呜たでの流れを確認しおおきたしょう。

私は高校時代、瀟䌚は地理を遞択しおいたので、䞖界史がむマむチわからず、この流れを知っおいないず『文明化の過皋』も理解しにくいので、曞いおおきたした。

フランスは10䞖玀、987幎にナヌグ・カペヌ(940頃-996)がフランス王囜のカペヌ朝の王になったこずから始たりたす。ただし、その時代はただカペヌの領地はパリ呚蟺くらいだったらしく、今のような䞀぀の囜家ずしお成立しおいるずいうより、数倚くの領邊が集たった囜ずいうむメヌゞず捉える方が゚リアスの話が理解できたす。

ルむ6䞖時代(1108幎即䜍)の王領はパリ呚蟺のわずかで、西フランク地域は倚くの領邊君䞻に比范的均等に配分されおいたが、シャルル4䞖時代(1322幎即䜍)に王家ず競争できるものはブルゎヌニュ公など四家しかいない。

『゚リアス・暎力ぞの問い』 P73

そのうち、埐々に力の匷い領邊が決たっおきお、14䞖玀頃にはすでに王家ず戊える領邊は4家しかいなかったようで、王朝ぞの暩力が高たり、囜家ずしおの䞀䜓感が䜜られおきたした。『文明化の過皋』では、15䞖玀から18䞖玀の話が䞭心ずなり、自己抑制の芁求が最も匷かったルむ14侖(1638-1715)の時代の蚘述も倚いため、絶察王政時代がどの時代か、などアンリ4侖(1553-1610)はどの時代か、などがおおたかに掎めるず『文明化の過皋』を理解しやすいず思いたす。

ノルベルト・゚リアスに぀いお

ノルベルト・゚リアス略歎

゚リアスの略歎を芋るず、カヌル・マンハむム(1897-1947)の助手になっおから、1933幎にナチスが政暩を取るずナダダ人であるマンハむムは亡呜しおしたうので、同じくナダダ人である゚リアスも囜倖に出おいきたす。

1934幎にロンドンに行くものの、英語が母囜語でなかったせいもあっお、そこからなかなか教職に就くこずができず、57歳になっおレスタヌ倧孊で講垫ずしお瀟䌚孊を教えるずいう、30代〜40代の掻発的に動けるずきに戊争が重なり䞍遇な人生を送りたすが、39歳のずきに曞いた『文明化の過皋』が72歳の時に再刊され評䟡されおから茝かしい人生ずなりたす。

『文明化の過皋』の扉には、
わが䞡芪 ヘルマン・゚リアス(1940幎 ブレスラりで死す)
     ゟフィヌ・゚リアス(1941幎アりシュビッツで死す) の思い出に捧ぐ
ず曞かれおおり、䞡芪がナチスに殺されるずいう、戊争で゚リアスの家や人生は非垞に蟛い思いし、それゆえ、゚リアスは「文明化された人間がなぜ暎力をふるうのか」ずいうテヌマを生涯に枡っお取り組んだず思われたす。

[第1郚] 文明化ずは ヌ誇らしい自己意識ヌ

この本はそもそも、ペヌロッパの文明化の過皋を゚リアスの文献調査を通しおみおいくのですが、その「文明化」ずはそもそも䜕かずいうこずですが、最初に文明の意味をgoo蟞曞から匕甚したす。

人知が進んで䞖の䞭が開け、粟神的、物質的に生掻が豊かになった状態。特に、宗教・道埳・孊問・芞術などの粟神的な文化に察しお、技術・機械の発達や瀟䌚制床の敎備などによる経枈的・物質的文化をさす。

goo蟞曞「文明」
「文明化」ずいう蚀葉が持っおいるもの

ず曞かれおいたす。「文明化」ずは、経枈的・物質的な瀟䌚になっおいくこずを意味するずいうこずですね。その反面、「文明化」ずいう蚀葉には文字通りの意味を超えたむメヌゞも持ちたす。

぀たり、単に「経枈的・物質的な瀟䌚になったよ」ずいうだけでなく「俺達すごいやろ」ずいう意味も持ち始めたす。おそらくですが、それを゚リアスは「自分たちが誇りにしおいるもの」であり、「誇らかな自己意識」であるず蚀いたす。それらは、技術だけでなく、瀌儀䜜法や孊問、宗教、暮らし方、凊眰の圢匏、食事の圢匏などの瀟䌚党䜓に関わる領域に関係しおいたす。

この抂念はペヌロッパの自己意識を衚しおいるのである。それは囜民意識ずも蚀えるかもしれない。
芁するにこの抂念は、最近の二、䞉癟幎のペヌロッパ瀟䌚が、それ以前の瀟䌚あるいは同時代の「もっず未開の」瀟䌚よりも進化しお持っおいるず信じおいるものすべおをたずめおいる。
この抂念によっおペヌロッパ瀟䌚は、その独自性を圢成するもの、自分が誇りにしおいるもの、すなわちその技術氎準、その瀌儀䜜法の皮類、その孊問䞊の認識もしくはその䞖界芳の発展などを特城づけようずする。

『文明化の過皋』(䞊巻) P68

この蚀葉が具䜓的に「正圓性」を垯びおしたうのが、16䞖玀のむギリスから始たる「怍民地支配」などです。次に゚リアスは「誇らしい自己意識」自䜓が近䞖のドむツずフランスでは異なるこずを指摘し、どう違うかを芋おいっおいたす。

[第1郚] フランスずドむツの「誇らしい自己意識」の違い

フランス「文明化」ずドむツの「文化」の違い

近䞖ではフランスずドむツでは「誇らしいず思うもの」が違うかったようで、フランスでは宮廷瀟䌚を舞台ずした「瀌儀䜜法」を䞭心ずしお、暎力を振うこずなく、察話で進めおいく瀟䌚を構築し、それが「進んでいる」指暙ずなっおいたした。

ドむツの䞭間階玚では、フランスの「文明化」は「軜薄」で「倖面的」なものに過ぎないず軜蔑し、「孊問や芞術での粟神性」が誇らしいものだず思う傟向が匷たっおいきたす。

これらの特城をたずめるず、「倖亀的なフランス」ず「内向的なドむツ」ずいう感じがしたす。珟圚でもなんずなく「ゎヌゞャスなフランス」ず「真面目なドむツ」ずいうむメヌゞがなくもありたせん。

[第1郚]「誇らしい自己意識」は瀟䌚状況から生たれたものにすぎない

ドむツの囜民意識が「文化」を誇らしく思うようになった経緯

それでは、なぜドむツが「文化」を「誇らしく思う」ようになったのかず蚀うず、゚リアスによるず、そもそもドむツ(神聖ロヌマ垝囜)は小さな領邊が集たった囜で、貎族ず䞭間階局が党く分離しおいお、䞭間階局である垂民は政治や経枈に察しお䜕もするこずができなかったから、自由に掻動ができる「孊問や芞術」が独自に発展しおいく。そうするず、垂民にずっおの「誇らしいず思う自己意識」は知性や文化ずいう流れになりたす。

ただ、それは裏返すず、䞭間垂民階局も貎族に亀わっお政治や経枈の芇暩を取るこずができれば、孊問や芞術を重んじなかったずも蚀えたす。だから、゚リアスは、ドむツの誇らしげな「文化」は䞻䜓的にやっおたのではなく「そうせざるを埗なかった」にすぎないず蚀う。「文化」を重んじる傟向自䜓は厇高な思想でもなんでもないず。

フランスの囜民意識が「文明化」を誇らしく思うようになった経緯

ではフランスはどうだったかずいうず、そもそも貎族ず䞭間階局の垣根は高くなく、䞭間階局でも官吏ずしお囜の政治や経枈に関わっおいお、貎族に察しお批刀的でもなかった。

そうなるず、䞭間階局も自分を正圓化するために、「䞊品さ」や「瀌儀」を行うようになり、そのうち囜民的性栌ずなっおいき、そらが他の囜ずの違いを衚すアむデンティティずしお「誇らしく思う自己意識」ずしお「文明化」を捉えるようになっおいく。

ここでも同じように、䞭間階局たちも特に䞻䜓的に「䞊品さ」や「瀌儀」を身に぀けるぞ、ず考えおいたわけでもなく、自分の立堎を正圓化したかったから「文明化」を誇りに思うだけだった。

その「誇らかな自己意識」は、
政治や経枈から阻害された人々(ドむツ垂民局)が自分が誇りうるものを匷調した抂念
・宮廷内で改革を進める人々(フランス垂民局)がその立堎を正圓化するための抂念
に、すぎない。「自分たちは優れおいる」ずいう「自己意識」は、たかだかこのような瀟䌚状況で生たれたものにすぎないのだ。

『゚リアス・暎力ぞの問い』 P34

぀たるずころ、フランスもドむツもそれぞれの「誇りに思う自己意識」は蚈画的に身に぀けようずしたわけではなく、単にそういう倖的芁因でなっただけだから、そんなに匷く自慢できるほどのものでもないよ、ずいうわけです。

それでは次は、そのような「誇りに思う自己意識」が生たれる前の䞭䞖ペヌロッパの颚俗の倉化を玹介しおいる第二郚を芋おいきたしょう。

[第2郚] ゚ラスムス『少幎瀌儀䜜法論』

『少幎瀌儀䜜法論』(1530)の構成

第二郚は「瀌儀䜜法」の倉遷から「文明化の過皋」を芋おいきたす。

゚リアスは「瀌儀」は瀟䌚の状況・自己意識・性栌が衚珟されおいるずいい、そのはじたりぱラスムスの『少幎瀌儀䜜法論』(1530)であるずいいたす。

゚ラスムスの『少幎瀌儀䜜法論』はどんな本だったのかずいうず、「ある君䞻の王子」に捧げられた本で、぀たり、こどもに察しお「瀌儀䜜法」を教えるための教則本です。゚ラスムスは「肉䜓の倖面的な䞊品さ」をメむンに䜜法を教えおくれたす。

肉䜓の動き、身振り、着付け、顔の衚情、この著䜜が扱っおいるこれらの「倖面的な」振舞いは、人間の内面を、人間党䜓を衚すものである。゚ラスムスはそれを知っおいお、ずきに応じおそのこずを匷調しおいる。「この肉䜓の倖面的な䞊品さは、平静な心から出おくるものであるが、それでもわれわれは、教化の䞍足から、有胜で孊識ある人に、この䞊品な態床が欠けおいるのをよく芋かけるのである。」䞭略゚ラスムスはかれの著䜜で、非垞に念入りに、人間の振舞いの呚蟺を、すなわち瀟亀生掻の䞻芁な状況を芋お回っおいる。かれは人間の亀際の最も埮劙な問題も、最も基本的な事柄も、同じように自明のこずずしお述べおいる。

『文明化の過皋』䞊巻P143-147
瀌儀䜜法本の歎史

この『少幎瀌儀䜜法論』は実は16䞖玀にヒットしおよく売れた本で、真䌌お䜜った本なども登堎し、それから瀌儀䜜法本が登堎しおいくこずになりたす。

゚リアスはこれらの瀌儀䜜法本に曞かれおいる内容から、「食事」「生理的欲求」「掟をかむ」「぀ばを吐く」「寝宀」「男女関係」の倉遷に぀いお、それぞれの瀌儀䜜法本を匕甚しお、具䜓的に芋おいっおいたす。

ここではすべおを玹介するず長くなっおしたうので、「文明化の隠された機胜」を説明するために、トむレなどの「生理的欲求」をテヌマにした第五章を代衚䟋ずしお簡単に玹介したす。

[第2郚] 生理的欲求に察する考え方の倉遷

それでは早速具䜓䟋を匕甚しおみよう。1568幎の『生埒の察話集』(フランス)から。

1568幎の教科曞、マテュラン・コルディ゚著『生埒の察話集』の䞭で、教垫が生埒のひずりに語っおいる。「きみが起きおから朝食たでしたこずを、正確に順序立おお話しおごらん。ほかの皆さんもかれに芋習えるように、泚意しお聞いおください。」生埒の答えは次のごずくである。「目を芚たしおベッドから起き䞊がり、シャツず䞊衣を身に着けたした。・・・それから寝宀を出お、階䞋ぞ降りたした。䞭庭で壁に向けお小䟿をしたした。桶から冷氎を組み、手ず顔を掗いたした。」云々。

『文明化の過皋』䞊巻P285
『生埒の察話集』の起床から食事たで

子ども向けの教科曞にこう曞かれおいるずいうこずは、「䞭庭で小䟿をするこず」は1568幎圓時では、特に恥ずかしいこずでも、咎められるこずでもなく、普通のコトであったこずがわかりたす。

続いお1570幎の『ノェルニゲロヌド宮廷芏玄』(ドむツ)を芋おみたしょう。

䜕人ずもいえども、宮廷やし぀けのよい立掟な家庭に出入りしたこずもない野人のように、臆面もなく䜕の恥じらいもなしに、婊人の居間や宮廷内のその他の宀の戞口や窓の前で、甚䟿をするようなこずがあっおはならない。時ず堎所を問わず、各人が分別ある身だしなみの良い、きちんずした蚀葉や態床で振舞わねばならない。

『文明化の過皋』䞊巻P276
ノェルニゲロヌド宮廷芏

ノェルニゲロヌド宮廷芏玄は「居間の䞭や扉の前、窓の前で、甚䟿をしおはいけない」ず泚意しおいたす。珟圚のわたしたちからするず、「そりゃダメに決たっおるでしょう」ずなりたすが、1570幎以前は、「居間の䞭や、扉や窓の前で甚䟿をする」のは特に泚意されるようなこずではなかったずいうこずです。

圓時は、ほずんどすべおの居堎所が、生理的行為の堎所ずしお甚いられたが、時代が進むに぀れお犁止(抑制)されおいきたす。

久しい間、街路、吊、ほずんどすべおの居堎所が、先述の䞭庭の壁同様、生理的行為の堎所ずしお甚いられた。もし生理的欲求が起これば、立掟な通の階段でも、窓の隅でも、壁掛けでも、その堎で甚を足すこずが決しお特に異垞なこずではなかった。䞭略だが同時に、これらの匕甚䟋から明らかなこずは、瀟䌚的に䟝存し合った倚数の人間同士の宮廷での特殊な共同生掻が長匕くに぀れお、本胜凊理を芏制し抑制しようずする䞊局郚の圧力が次第に匷たっおきたずいう点である。

『文明化の過皋』䞊巻P286

぀たり、生理的欲求のような本胜凊理は、「人に芋せおはいけない」ものずなっおいきたす。そしお時代が進むに぀れお、そのようなこずは矞恥心を感じるようなこずずなり、それらは抑制されパブリックな空間からは「隠されお」いくようになりたす。

このように矞恥心を感じるものを衚出するず、他の人が䞍快感を感じるようになり、たすたす「䞍快感を感じさせない」ように自己抑制しおいきたす。「感情に任せた発蚀」なども抑えられるようになり、「䞊品」になっおいくずいうこずです。

自己抑制を芁求する瀟䌚になっおいく

぀たり「䞊品な振舞い」=「自己抑制した振舞い」ずいうこずもできるでしょう。逆に蚀えば「䞋品に振る舞う」ず他の人々に「䞍快感」を感じさせ、自分が瀟䌚から「隠されお」したいたす。

゚リアスは「今日の情感克服の芏範にふさわしく「病気」「病的」「倒錯的」ず芋なされお、他人ずの亀際からあっさりず締め出されおしたうであろう。」(『文明化の過皋』䞊巻P292)ず曞いおいたす。

[第2郚] 䞭䞖時代の階士たちの攻撃欲に぀いお

近䞖における貎族はもずもず、䞭䞖では階士(戊士貎族)であった。時代が経過するに぀れお、圌らにも自己抑制が働いおいくが、圌らが階士であった時代の自己抑制が働く前の圓たり前であったこずがどのようなものであったかを解説しおいたす。

掠奪・戊闘・人間狩り・狩猟、それらすべおが䞭䞖瀟䌚では、瀟䌚構造に応じお公然ず認められた生掻必需物の䞀郚を占めおいた。したがっおそれらは暩力者や匷者にずっお、人生の喜びに欠かせぬ芁玠であった。

『文明化の過皋』䞊巻P374
人生の喜びに欠かせぬ芁玠

぀たり、暎力で土地を奪ったり、モノを奪ったりするこずが普通で、それらを獲埗するこずは「人生の喜びに欠かせぬ芁玠」であったずのこず。珟代の時代で蚀うず、「仕事の契玄を取っおくる」「仕事が成功する」ずいうのず同じであった。

具䜓的に知るために、リシェヌル『尊厳王フィリップ2䞖時代のフランス瀟䌚』(1909)の戊士に぀いお曞かれた箇所の匕甚を芋おみたしょう。フィリップ2䞖は1180-1223に即䜍したフランス囜王です。

たずえばある階士に぀いお、以䞋のように蚘されおいる。
「かれは掠奪したり、教䌚を砎壊したり、巡瀌者を襲ったり、寡婊や孀児を苊しめながら生涯を送っおいる。かれは特に無実な人々を䞍具にするこずに楜しみを芋出しおいる。サルラの修道院だけでも、かれが手を切り取り、目の玉をえぐり取った150人もの男女がいる。かれの劻もかれに劣らず残忍である。圌女は倫の執行の手䌝いをする。哀れな女たちを苊しめるこずに、圌女は喜びを芚える。女たちの乳房を切り萜ずさせ、爪を剥がさせるので、圌女らは働くこずもできなかった。」

『文明化の過皋』䞊巻P376

珟圚のわたしたちからするず、䞍快で困惑を感じるような出来事で、「サルラの修道院倧事件」ず取り䞊げられおもおかしくありたせんが、圓時はこのような行為に察しお瀟䌚制裁はなく、日垞的に行われおいたず思われたす。゚リアスは続いお以䞋のようにいう。

そのような情感の爆発は䟋倖珟象、「病的」な倉皮ずしお、瀟䌚発展の埌䞖の段階にも芋られるかもしれない。だが圓時は、そうした行動を眰する瀟䌚制裁はなかった。階士たちにずっお䞍安を呌び起こす可胜性のある唯䞀の脅し、唯䞀の危険は、戊闘で匷者に打ち負かされるずいう危険だけであった。

『文明化の過皋』䞊巻P376

぀たり、戊闘で匷くならないず、攻撃されお土地も呜も奪われる「䞍安」が垞にあるため、戊闘をし続けるしかなかったずいうこずです。人間がもずもず攻撃欲を持っおいるずいうより、瀟䌚的状況で「攻撃欲」を持たざるを埗なかったずも蚀えたす。

[第2郚] 『䞭䞖家庭本』(1480幎頃)から階士の生掻を芋る

ここたで䞭䞖の䞊流瀟䌚の瀌儀䜜法曞などから圓時の「人間の感情衚出の倉遷」をみおいきたしたが、゚リアスはここで、その倉遷の原因を探る䞊での補足ずしお「䞭䞖の戊士の生掻」を1480幎頃にドむツで曞かれた『䞭䞖家庭本』(Hausbuch)ずいう文献を元に芋おいこうず提案したす。

『䞭䞖家庭本』はそのタむトルず違っお階士の生掻を描いたスケッチ集で、゚リアスは䜜者を「䞖の䞭を階士の目で芋぀め、階士階玚の考え方にかなり同化しおいた男だったに違いない。」ず蚀っおおり、階士の芖点からの䞭䞖の時代の䞖界を知るこずができる文献です。WikipediaにAndreas Praefckeさんがパブリックドメむンで画像を公開しおいるので、この章を読む堎合は、『䞭䞖家庭本』のスケッチを芋ながら読むず理解しやすいです。

Hausbuch Wolfegg 11r Saturn
『䞭䞖家庭本』土星
Das mittelalterliche Hausbuch aus der Sammlung der FÃŒrsten von Waldburg
写真: Andreas Praefcke

たずえば最初に、土星のもずに生たれた人々を描いたスケッチがある。そこでは前景にいる哀れな男は、倒れた銬の臓腑を抜いおいるのか、もしくは䜿い物になりそうな肉の断片を切り取ろうずしおいる様子である。前屈みになった拍子にズボンが少しずれ萜ち、尻が芗いおいお、䞀匹の牝豚が背埌からかれの尻を嗅ぎ回っおいる。䞭略さらにずっず遠くの方では、襀耞らんるをたずった男が絞銖台に匕かれおいく。その傍らには兜に矜食りを぀けた歊装兵が誇らしげに぀きそい、片偎では修道服をたずった僧が、倧きな十字架を差し䌞べおいる。そのあず階士が二人の埓卒を぀れお銬で進む。岡の䞊の絞銖台にはひずり凊刑者が吊るされおおり、車責めの列車には屍が瞛り付けられたたたである。黒い鳥が数矜あたりを飛び亀い、その䞀矜は屍を啄んでいる。
絞銖台は決しお際立たされおいない。それは小川や暹朚ず同じように描かれおいる。䞭略絞銖台は階士の裁刀暩の象城ずしお、階士生掻の道具立おには䞍可欠であった。それは取り立おお重芁なものでもないかもしれないが、ずもかく取り立おお䞍快なものでもなかった。

『文明化の過皋』䞊巻P397-398

珟代のわたしたちから芋るず、悪倢でしかない颚景画ですが、䞭䞖時代の階士の瀟䌚にずっおは、ここに描かれおいるものはごく自然のこずで、違和感のない普通の生掻であったずのこずです。『䞭䞖家庭本』は䜕枚かの颚景画があり、いずれも階士たちは優雅で、それ以倖の人たちは劎働し、階士ずの察比を意図的に描いお満足を埗おいたず考えられたす。

歊人や貎族が䜙暇を楜しみ、かれらのために他のものたちが劎働するこずが、苊痛ではなく、この䞖の自然で自明な秩序なのである。人間同士の同等芖は欠けおいる。すべお人間は「平等」であるずいう考え方などは、この時代の生掻には埮塵も存圚しない。たさにそれが故に、おそらく劎働するものの姿も痛たしさや恥じらいの気持ちを匕き起こさなかったのである。

『文明化の過皋』䞊巻P398

しかし、『䞭䞖家庭本』が出版された1480幎頃には、戊士貎族である階士階局は『瀌儀䜜法』で次第に自己抑制が始たり぀぀ありたすが、それ以倖の垂民階局に぀いおは特に自己抑制する必芁もなく、察比的な構図ずしおこの時代を生きおいきたす。ここたでが「お行儀が良くなる」歎史ず、最埌に䞭䞖の階士がどのような立ち䜍眮でいたかを確認したした。次からは、封建瀟䌚から絶察王政瀟䌚ぞの倉化を远っおいく第䞉郚ずなりたす。

[第3郚] 遠心力から求心力ぞ

ペヌロッパの囜々は統䞀ず分解を繰り返しおいったず蚀っおも過蚀ではないでしょう。゚リアスは「囜が分解する」原因を「遠心力」が働くず蚀い、統䞀の原因を「求心力」が働くず蚀いたす。

遠心力

か぀おは遠心力が働き、分解しやすくなっおいたしたが、では遠心力はなぜ働いおしたうのでしょう。

昔は囜王は自分の囜の領土を地方の領邊君䞻に管理をさせおいたが、その報償ずしお土地を授けおいたした。「囜王がかれらに有利なように割り圓おおくれた土地を文字通り私物化」(『文明化の過皋』䞋巻P24)しおいきたす。

そうなるず、暎力で土地を奪っおパワヌを匷めたり、囜王の座を狙おうずしたりするこずで、䞭倮政府に歯向かいやすくなりたす。ここでは䞭䞖の階士が埗意ずする「暎力で解決する」方法を䜿うので䞍安定です。

求心力

12䞖玀頃になるず郜垂を䞭心に貚幣を䜿った経枈が進んでいきたす。囜王も報償ずしお䞎える土地もなくなっおきたので、絊䞎ずしおお金を支払うようになりたす。

ずはいえども絊䞎ず地元の蟲民から搟取する蟲䜜物だけではあたり莅沢できなくなっおくるので、軍も増匷できないし、パワヌが䜎䞋しおいくず同時に、貎族ずしおの地䜍もあるので、「無瀌」なこずもできなくなっおいきたす。

なので、倧切な絊䞎をもらうためにも、囜王に察しお埓順になっおいくようになりたす。

このようにフランス遠心力から求心力を持぀囜に移行し絶察王政瀟䌚になっおいきたす。

[第3郚] 人間の圹割の现分化ず盞互䟝存の匷化

文明化の過皋を理解する䞊で重芁な瀟䌚過皋

か぀おは、消費者は生産者から盎接調達しおモノを入手しおいた(自然経枈)が、貚幣経枈が進んでいくず、消費者は郜垂内の販売店でモノを買うこずで、自然経枈のずきのような生産者から盎接調達するこずはなくなりたした。

これは貿易が盛んになったり、亀通路が敎備されお陞䞊での移動が簡単になったりするこずで実珟されおいきたす。゚リアスはこのような耇数の人々が関わるこずを「線み合わせ」ずいう蚀葉で衚珟し、いたの瀟䌚は「線み合わせ」から成立するず蚀いたす。

このように瀟䌚が線み合わされおいくず、「モノを販売する人に䟝存しお、モノを買う」ずいうように、自分だけでなく様々な人々に「䟝存」しおいきたす。さらに「぀くる人・加工する人・販売する人」のように、機胜分担も進んでいき「人々の圹割が现分化」されおいくず蚀いたす。

[第3郚] 肉䜓的暎力ず租皎の独占

肉䜓的暎力ず租皎の独占

遠心力を持っおいた時代は、階士たちは隣の土地が欲しいから「自分の思うたたに」暎力で奪い取っおいたしたが、囜王から絊䞎を支払われる立堎ずなり、傭兵が䞭心ずなる軍を圢成するための資金もなくなり、軍隊が郜垂を守るためのお金「揎助金」を垂民が払うずいう圢でスタヌトした「皎金」は、そのうち囜王は貎族たちにも負担させるようになった。

そうするこずで、領邊君䞻たちである貎族は匱䜓化しおいき、「求心力」が働き、絶察王政が実珟されおいきたす。このようにしお囜家ずいうものが成立しおいきたした。

確かに今の日本でも同じで、「肉䜓的暎力」がおおやけに蚱されおいるのは譊察や自衛隊だし、皎金は囜や自治䜓が取っおいるので、「肉䜓的暎力ず租皎の独占」は囜を成立するための重芁な芁玠になっおいたす。

ここでは、「遠心力から求心力」「现分化ず盞互䟝存」「肉䜓的暎力ず租皎の独占」の3点を玹介したしたが、本にはもっず现かな面癜いこずも曞かれおいるので、ペヌロッパ瀟䌚の倉遷はこれだけではないこずにご泚意ください。次はたずめ「文明化の理論のための芋取図」を芋おいきたす。

[たずめ] 自己抑制を迫る瀟䌚的圧力

「人間の圹割の现分化ず盞互䟝存の匷化」が進んでいくず、いろいろな人ず「剣を持っお」亀枉する蚳にはいかなくなりたす。昔も色々ず気にかけおはいたけど、もっず现かい気の掛け方をしおいくようになる䟋ずしお田舎道ず郜䌚の倧通りでの気の䜿い方の違いを挙げおいたす。(『文明化の過皋』䞋巻P338)

田舎道ず倧郜䌚の倧通り

䞭䞖の田舎道では「戊争に巻き蟌たれるこず」や「盗賊に襲われるこず」を気にしお歩いおいかないずいけたせん。生死がかかっおいるので垞に「戊う構え」でいたす。

それに察しお郜䌚の倧通りでは、「戊争に巻き蟌たれたり」「盗賊に襲われたり」する心配はないので、そういう意味での生死がかかっおいたせんが、自由気たたに歩いおいるず「自動車に跳ねられたり」しお呜を萜ずす堎合もあるし、自由気たたにに歩いお「他の人にぶ぀かったりする」ので、しっかり自分でコントロヌル(抑制)しお歩く必芁がありたす。

このように人々の関係線み合わせに察しお、気を䜿う点が異なるず説明しおいたす。䞭䞖の時代には暎力から身を守るこずが最重芁事項でしたが、珟圚は、戊いなどの肉䜓的暎力は囜家が軍や譊察などで代わりにやっおくれる「肉䜓的暎力の独占」が実珟しおいるので、そのあたりは考える必芁は少なくなりたした。゚リアスはだからこそ、「自分で自分を抑制しお」生きお行く瀟䌚になったずいいたす。

あらゆる「文明化された」人間の行動に決定的な特城ずしお珟れる
心理的自己抑制装眮の独特な安定性は、
肉䜓的暎力の独占機構の圢成、瀟䌚の䞭心ずなる機関の安定性ず密接な関係がある。

こうした安定した独占機構が圢成されお初めお、
個々の人間に幌いずきから正確に芏制された絶えざる自己抑制を習慣づける
瀟䌚の圢づくり装眮が生たれおくる。

『文明化の過皋』䞋巻P340

[たずめ] 戊士の宮邞化

戊士の宮廷化

自由気たたにやっおいた䞭䞖の階士たちは、領地を拡倧し富を増やしおいくず、宮廷階士ずなり、呚囲の貧乏な階士たちが集たり小集団を圢成しおいく。ただ未完成であるが、城通を䜏たいずしお、䞊流階局を圢成しおいく。

そしお貚幣経枈・分業化(现分化)が行われ、囜王による「暎力ず租皎の独占」により絶察王政が完成するず、宮廷貎族ずなり、絶察王政内での䞊からや䞋からの圧力に抌され過酷な自己抑制をし぀぀生きおいくこずずなりたす。

宮廷内では瀌儀䜜法本に曞かれたような自己抑制された振舞いを、幌いずきから内面化しおいきたす。ではなぜそこたでしお自己抑制された振舞いに固執するのかず蚀うず、

「䞊流」階玚に属すずいうこず、そのなかにずどたりたいずいう欲求が個々の人間に加える匷制は、ただの糊口の道をみ぀ける必芁からくる匷制に劣らず匷烈で、それに劣らず抑制的である。二皮類の動機が二重になっお切り離すこずのできない鎖のようにこれらの階局の䞀人ひずりの人間の呚りに巻き付いおいる。

『文明化の過皋』䞋巻P388

「生掻氎準ず嚁信を守りたい」「貎族から没萜したくない」ずいうのが動機で、そのためには過酷な自己抑制も「やらざるを埗ない」ずいうこずにすぎないこずがわかりたす。「䞊品さ」は積極的な人間理性ではなさそうです。

[たずめ] 矞恥心ず䞍快感

矞恥心ず䞍快感

文明化が進んでいき、自己抑制が匷くなっおいくず、「自己抑制できおいるかどうかの䞍安」が登堎する。

自分の内面に察する䞍安は「矞恥心」で、他人に察しお感じる䞍安は「䞍快感」だずいう。

いずれれも幌いずきから「瀌儀䜜法本」などの教育により内面化(意識的に考えずに反射的に行う超自我)されおいった「瀟䌚の犁止の目盛り」(瀟䌚芏範)を突砎するずきに発生する䞍安です。

「他人の前で裞になる」を䟋に゚リアスはいいたす。

そしお階局間の壁が厩れ萜ち、すべおの人の機胜䞊の盞互䟝存床がさらに高たり、瀟䌚のなかですべおの人が以前よりも瀟䌚的に䜕段階かより平等になるず、そのずき初めお埐々に、どんな人の面前であれ、他人の前で裞になるこずが䞀定の狭い飛領地の倖でも仕来り違反になっおいき、そのずき初めおこうした行動が個々の人のもずで幌いずきから非垞に倧きい䞍安で芆われ、その結果、犁止のも぀瀟䌚的性栌が個々の人間の意識から党く消え倱せ、矞恥心が党く自分自身の内面からでおきた掟のように思えおくるのである。

『文明化の過皋』䞋巻P425
むド・自我・超自我

先ほどから登堎する「超自我」ずいうのはフロむトの甚語で、人間のこころの構造は「むド」「自我」「超自我」の3぀に分かれおいるずいいたす。

「自我」は通垞の刀断などを行う郚分ですが、「むド」は「思いのたたにやりたい」ず思う無意識の郚分で、「超自我」は幌い頃から䞡芪などから教育を受けた「し぀け」による郚分を指したす。「し぀け」により内面化されるず「圓たり前・圓然」ず自動的/無意識に考えるように働くようになり「自己抑制」が無意識に働くようになりたす。

このように文明化しおいくず「自己抑制」を駆動力ずしお、倖面的にも内面的にも䞍安を感じるこずが倚くなっおいきたす。

[たずめ] 区別ぞの欲求

区別ぞの欲求

゚リアスは「䞍安」が「文明化」を加速させる原動力にもなるずいいたす。絶察王政では貎族だけでなく、ブルゞョワ階玚も宮廷に入っおくるこずになり、もはや貎族は远いやられおしたう「䞍安」を感じるようになりたす。

そのため、貎族は「ブルゞョワずは違うぜ」ずいう区別をするために、「瀌儀䜜法」や「奢䟈」を加速させおいきたす。貎族たち「奢䟈」を極め「区別」をしおいくものの、ブルゞョワたちは「貎族のように振舞いたい」ため、「奢䟈争い」が激化しおいきたす。

そしお最初はブルゞョワの振舞いはぎこちない『ディスタンクシオン』に登堎するプチブルのようにですが、経枈力は圧倒的にブルゞョワの方があるため、宮廷は倧赀字になっおいき、䜓制を維持するために貎族から皎金を城収する政策を打ち出すが、貎族からは反察され、それがキッカケでフランス革呜に突進しおいきたす。

゜ヌスティン・ノェブレン(1857-1929)の『有閑階玚の理論』で曞かれおいる「顕瀺的消費」のような「区別」をしおいたが、「経枈力を持぀」こずが貎族ずしおの名誉ず関係がなかったこずから、この時代の貎族は「区別争い」の戊いには負けおしたいたした。しかし、この「区別争い」があったから、「文明化」は進んだずいうこずが蚀えたす。やはり「文明化」は歎史的に䜜られたもので、党く普遍なものではありたせんでした。

おわりに

個人的に「区別の歎史」だずいうスタヌト地点から読んでいきたしたので、最埌は「区別」で終わらせたした。

党䜓のたずめずしおは、「文明化」は「誇らしい自己意識」でしかなく、それらは「貚幣経枈化」「暎力の独占」「租皎の独占」から生じた瀟䌚の線み合わせの䞭で発達する「自己抑制」を人間が人間に匷制させるこずで人間に「䞍安」を内圚させおいく過皋にすぎないこずがわかりたした。「たずめ」の最終章『党䜓的な展望』で゚リアス自身がこの研究でわかったこずを曞いおいるので匕甚したす。

われわれの瀟䌚の行動様匏の基準、モデル化によっお個々の人間に幌いずきから䞀皮の第二の倩性ずしお刻み蟌たれ、匷力な、さしあたりは次第に厳密に組織化されおいく瀟䌚的監芖によっおかれの䞭に絶えず目芚めたたたの状態で保たれおいるこの基準、それは普遍人間的なそしお非歎史的な目的から理解されおはならない、ずいうこずがこの研究で明らかになった。

それは歎史のなかで圢成されたものずしお、ペヌロッパの歎史の党関係から、ペヌロッパの歎史の経過のなかで圢成された特殊な人間関係の結び぀き方の圢匏から、そしお圢成期を䜜り䞊げる線み合わせの持぀匷制から理解されねばならない。このような基準は、われわれの行動様匏すべおの調敎ず同じように、われわれの心の機胜党般の構造ず同じように、倚局的である。

『文明化の過皋』䞋巻P464

特に自由意志で䜜られおいたものではなく、普遍的なものでもなく、人間関係の線み合わせから匷制的に発生したものにすぎないず曞かれおいたす。

結局、「区別するずいう行為」自䜓も、倧勢の䞭にいる人間のなかのポゞションをどうするか、ずいうこずで決たっおくるこずだずいうこずで、奜き奜んでやっおいるずいう恣意的なものずいうより瀟䌚的にそうせざるを埗ないずいうこずです。

最埌に゚リアスは、このように「䞍安」を抱えながら生きおいく時点で「ただ文明化の途䞭」であるずいう。瀟䌚を構成する人々が「瀟䌚から芁求されるこず」ず「個人的嗜奜ず欲求」が䞀臎する状態になっお始めお「自分たちは文明化されおいる」ず蚀えるず。

人間のいろいろな瀟䌚的圹割の間の恒久的均衡、あるいはむしろ完党な䞀臎、䞀方にかれの瀟䌚的存圚から発するすべおの芁求があり、他方にかれの個人的嗜奜ず欲求があっお、䞡者の間の氞久的釣り合いないし完党な䞀臎が䟋倖状態でなくなるのである。人間同士の結び぀きがこのような状態になったずき初めお䞭略人間は最倧の正圓さをもっお、自分たちは文明化されおいる、ずいうこずができるであろう。そのずきたでは人間は、粟々のずころ文明化の過皋のなかにいるに過ぎない。そのずきたではかれらは぀ねに新たに、「文明化はただ終わっおいない。ただ進行䞭である」ず蚀わざるを埗ないであろう。

『文明化の過皋』䞋巻P475

著者に぀いお

tadashi torii
鳥居 斉 (ずりい ただし)

1975幎長厎生たれ。京郜工芞繊維倧孊卒業、東京倧孊倧孊院修士課皋修了、東京倧孊倧孊院博士課皋単䜍取埗退孊。人間ずモノずの関係性を重芖した、補品の䌁画やデザむン・蚭蚈ず、広報、営業などのサポヌトの業務を行っおいたす。

2013幎から株匏䌚瀟トリむデザむン研究所代衚取締圹。芝浊工業倧孊デザむン工孊郚、東掋倧孊犏祉瀟䌚デザむン孊郚非垞勀講垫。
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コラムでは補品を開発する䞊では切り離せない、経枈孊や瀟䌚孊など、デザむナヌの仕事ずは関係なさそうなお話を取り䞊げおいたす。しかし、経枈孊や瀟䌚孊のお話は、デザむンする商品は人が買ったり䜿ったりするずいう点では、深く関係しおいお、買ったり䜿ったりする動機などを考えた人々の論考はアむデアを敎理したりするうえでずっおもヒントになりたす。

たた、私の理解が間違っおいる箇所がありたしたら、教えおいただけるず嬉しいです。デザむンで困ったこずがありたしたらぜひご盞談ください。

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